手の鳴るほうへ |
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「お。土方くん発見〜」 夕暮れの買い物客で賑わう商店街。 決して人ごみに埋没しない独特の存在感で、銀時の目を魅きつけてやまない、彼。 どんなに人がいても、どんなに遠くからでも、一目で見つけ出せる。 でも別に、これは銀時に限った話ではないと思う。 泣く子も黙る真選組の鬼副長だからあまりじろじろ見ちゃいけない、そう思うのに目が離せない。そんな感じでちろちろと土方に視線を向ける通行人の多さがそれを証明している。 もし何かの事情で土方の足取りを追跡する必要に迫られたとしても、目撃情報多数できっと容易い。ただすれ違っただけでも皆、何日の何時頃ここを通った、と鮮明に覚えていそうだ。 常に命を狙われる立場にある者がこんなに目立っていいのか、という気もするが、人目の多さが却って犯行を困難にしているのかもしれない。 当の本人はといえば小憎らしいほど平然と、まとわりつく視線を薙ぎ倒して歩いている。幼い頃から当然のように視線に晒され続けてきた者だけが持ちうる無意識の傲慢さだ。 そんな風に視線を黙殺されてしまう人々と銀時の違いは、ただうっとりと遠くから見つめるだけでなは飽き足らず、黒い制服姿を見たらちょっかいを出さずにはいられない点にあった。 しかもラッキーなことに、今日は一人きりだ。 足音を立てずに忍び寄った背中に飛びつこうとした、その瞬間。 喉元3ミリにピタリと白刃が突きつけられた。 目にも止まらぬ早業に、そのまま突き進んでいれば喉を串刺しだったにもかかわらず、銀時は暢気に感嘆の口笛を吹く。 「ヒュ〜ヒュ〜。さっすが、鬼の副長殿。カァッコイイねえ。…やっぱり、アレ? お前も『目隠し剣法』とか叩き込まれたクチ?」 前を向いたまま、土方の耳だけがぴくりと動いた。初めて聞く剣法の名称に、好奇心がむくむくと頭をもたげたらしい。だが素直に「なんだそれ」と銀時に訊ねるには、意地とプライドが邪魔をする。 「戦闘中には、目くらましや負傷で視界が利かなくなるなど珍しくない。突然見えなくなっても慌てず闘えるよう、日頃から闇に慣れておく必要がある。……とか言っちゃってさ。よく目隠しして乱打ちさせられたんだけど、なァんかあれって、実は俺以外みんな目隠ししてなかったんじゃねェの、みたいな気がしてならなかったんだよなァ」 前半は誰かの(たぶん剣の師匠だろう。銀時にも師がいたのかと思うとちょっと不思議な感じもする)口真似なのだろうか。思い出しても腹が立つ、という口ぶりが妙におかしくて、つい笑ってしまう。 「そいつぁつまり、お前だけがボコボコにされたって、そういう意味か?」 面白そうにクスクス笑う土方がようやく刀をおさめてくれたので、銀時は遠慮なく後ろから肩に腕をまわした。 「ガキの頃の話だっつーの。…じゃ、なに。お前は余裕だったってゆーんですかァ?」 「……当然だ」 目隠しして剣なんて振ったことがないくせに、つい土方はそう答えてしまう。銀時相手に「やったことがありません」なんて口が裂けても言えないのだ。 「…ふーん? じゃあ、今度勝負してみっか?」 いかにも信じてませんよー、な口調で挑発されて「NO」と言える土方でもない。 「……上等だ」 まんまと銀時の思惑通りに乗せられ、次の非番の日に目隠し勝負をする約束をしてしまったのであった。 屯所の道場では、稽古をしたい隊士たちの邪魔になってはいけないからと、恒道館を借りての勝負となった(もちろん、下心のある銀時の都合である。当然、道場主である新八とお妙には留守にしてもらった) 「んじゃ、土方の手ぬぐいはこれね」 準備していた目隠し用の手ぬぐい2本のうち1本を土方に手渡す。受け取りながら実に疑わしげな視線を向けてくる土方に、苦笑を禁じえない。 きっと、前に銀時が言った「相手は目隠しを外してたんじゃないか」という疑惑を覚えているのだろう。いかにも銀時が使いそうな手だと。 「…なに、その目? 俺が信用できねェの?」 「てめェのどこに、俺に信用されるような要素があるってんだ?」 「ひでェっ。俺は誠意大将軍だってうち負かしたほど真実一路の男なんだぞっ」 我ながら嘘くさい、と思っているぐらいだから案の定、土方は聞く耳持たずという顔をしている。 「…そこまで疑うんならしょーがねェ。お前が俺の分も目隠ししろよ」 戯言の応酬も楽しいのだが、こんなことで揉めるのは全然本日の目的とは違うので、さっさと譲歩して手ぬぐいを2枚とも渡してしまう。 そんなに俺にボコられるのが怖いのか、ぐらいのイヤミを言われるかと思っていた土方は、やや拍子抜けした面持ちで手ぬぐいを受け取ると、しばし逡巡の末、銀時の背後にまわりぎゅっと目隠しを縛った。 「…キツクねェか?」 「んや、だいじょーぶ」 きついどころかちょっと緩いぐらいで、こういうところが甘いというか優しいヤツだよなー、と思う。 自分にも目隠しをした土方が、竹刀を構え「いいぞ」と声をかける。 「…じゃ、はじめっか」 一呼吸おいて、素早く土方に打ちかかる。 ピシッ、と鋭い音を立てて土方の竹刀が受け止めた。 (おー、さすが。ゴリラに「誰よりも優れた直感力が最大の武器」とか言われただけあんぜ) 目隠しをして竹刀を振るうなど初めての経験だろうに(もっとも実は銀時も初めてなのだが。ただ実戦では血が目に入ったり暗闇だったりと、何度も盲目の状態で闘ったことがあるだけだ)わずかの迷いもなく、的確に銀時の攻撃を受け止めているのが、ぶつかり合う竹刀を通して手のひらから伝わってくる。 受け止めるだけでなく、なんとか攻撃に転じようとしているのも。 (けど甘ェぜ。何しろ俺は「土方の気配を探る選手権」の世界チャンピオンだからな。目なんか見えなくったって、お前の動きなんか手にとるように分かるぜ) もちろん、そんな大会はない。だが、伊達にいつもいつも土方の存在を追い求めていたわけでもないのだ。 銀時は最後まで一度も反撃させることなく攻め続け、そして土方はそれを完全に防ぎきった、怪我をさせないよう注意していたとはいえ、ただの一発も掠りもしなかったとは、恐るべき野生の勘だ。 しかしむろん、当人はそう考えていないだろう。 どちらからともなく竹刀をおさめて一歩退り、ほぼ同時に目隠しを外した土方は、いかにも悔しそうな瞳で銀時を睨みつけてきた。 (たのむぜー。そんな目で見つめないでくれよー) つい、いつもの調子で軽口をたたいて挑発したくなってしまうではないか。でも違うのだ。今日やりたいことは違うのだ、と銀時は何度も自分に言い聞かせる。 「あーあ、チクショー。一発も当てらんなかったぜ。…オメーこそ、もしかして目隠ししなかったんじゃねェの?」 自分のほうこそ悔しいんだ、と言外に土方の実力を持ち上げるような発言をする。実際本音なので、土方も皮肉とは受け取らなかったようだ。 「…テメーじゃあるめェし、俺がんなマネするわきゃねェだろ」 「まあな。そりゃ分かってんけどよォ。今でもこんななのに、これでもしお前が、完全に皮膚感覚を鍛えあげちまったら、ちょっともう無敵じゃね?とか思っちまったぜ」 ほーら、引っかかった。と、内心で銀時は喝采をあげる。 もうホント分かりやすい。どうやったら今以上に皮膚感覚を鍛えられるんだ、って全身が訴えてる。 ここまでくればもう、銀時の目論見は100%成功したといってもいいだろう。 ――また銀時にハメられた、と歯噛みしてももう遅い。 再び目隠しをした土方は、道場の真ん中に立っていた。 目隠しと、銀時の使っていた手ぬぐいで両手首を後ろ手に縛られている以外は何も身に着けていない状態で。 神聖な道場で、なんていう格好をしているんだと考えただけで動悸が速くなる。 「視覚を奪われりゃ、必然的に聴覚・嗅覚・触覚で相手の様子を探るしかねェだろ? 全神経を集中させりゃ、イヤでも感覚は鋭くなるってもんだぜ」 とかなんとか、もっともらしいことを並べ立てたところで。 要するにただのスケベ根性だってことは分かりきっているのに。 なんで「嫌だ」って。「誰がそんな格好するかっ」って言えないんだろう、と悔しくてならない。 だから銀時はどこまでも調子に乗るのだ。土方が本心から拒絶してないと決めつけて(…まあ、間違ってはいないのだが) 「……じゃ、始めるぜ?」 官能をくすぐる声が、耳元でゲームの始まりを告げる。 コクリ、と小さく土方の喉が鳴ったのを合図に、ふいに銀時の気配が消えた。 (ぇ……?) あまりにも鮮やかに存在感が消えうせ、不覚にも土方は動揺する。 だって、たった今まで耳元で囁いていたのに。吐息や体温や微かな体臭を感じていたのに。 かき消えたように銀時が感じられなくなり、戸惑いにふるりと震えた背中を指先がススっと撫で上げた。 「ひっ……?」 普段なら、思わず上げてしまった土方のこんな声にはクスリ、と笑みをこぼす銀時なのに、今は何も反応がない。 「っ……!」 すぐに指は離れ、カリっと耳たぶに歯を立てられ。 「ふぁっ…」 緊張に尖った両の乳首をくにっと潰される。 唇を吸われても、項を舐められても、脇腹を撫でられても、内腿を摩られても、全身の神経を集中して探っているにもかかわらず、銀時がどこにいるのか、どこに触れようとしているのか全く掴めない。 こんなに神経を研ぎ澄ませているのに僅かな空気の動きも感じられなければ、いつもならやたらと肌をくすぐる奔放に跳ねまくっている銀髪もどこにも触れない。あれほど剣を交えた後だ。土方もだが、銀時からも相当汗の匂いがしていたのに、それも感じない。 さらに、物音ひとつ聞こえないのも不安感を増幅させる。息遣いも聞こえないし、かなり古い道場だから少しでも動くたびにギシギシ床が音を立てるはずなのに、それもない。でも明らかに銀時は、前に後ろに右に左にと場所を移動している。 もしかして気づかないうちに耳まで塞がれてしまったのかとも思うが、自分のあげる声や耳の中に舌を差し入れられた時のピチャピチャ濡れた音は聞こえるから、聴覚に問題はないはずだ。 (どう、なってんだ……) これではまるで、銀時が宙に浮いてでもいるようだ。 というかむしろ、手と唇だけがふよふよと空中を漂い、時折土方に近づいては触れていく、そんな錯覚すら感じてしまう。 (ホントに、そこにいるのか……?) 舌が触れるほどの距離にいるのだから、土方が少し身じろぎすればぶつかるはずだ。 それなのに土方は、ぴくりとも動けない。 もし、どんなに躯を動かしても銀時に触れられなかったら、と想像したら。 いや、今だけじゃなくて。 そもそも坂田銀時という男は本当に存在したのか? あの掴みどころのなさは、この世ならざる者だったからではないのか? ひょっとして、土方の頭の中で生み出された、土方にだけ見えていた男なのではないか――? 疑惑は大きくなるばかりで、とても愛撫に感じてなんかいられない。 銀時の存在を確かめたい。 こんな、掠めるような愛撫ではなくもっとしっかりと触れて欲しい。強くきつく抱きしめて欲しい。――名前を、呼んで欲しい。 「ぎ、ん……」 抑えきれずに、声が微かに震えていた。 「銀、時っ……」 小さな、けれど切実な響きを秘めた声で銀時を呼ぶ。 「……どした?」 返事が戻るまでの数瞬が、無限に長く感じられた。が。 声を聞き、すりっと頬ずりされて体温を感じたとたん、さっきまでの不安がどうしようもなくバカバカしく恥ずかしいものに思えてきて。 「…トロトロとまだるっこしいんだよッ」 つい照れ隠しにそんなことを口走ってしまったものだから。 「そりゃ悪かったな」 ニヤリと意地悪く笑う顔が見えるような声を聞いて、しまった、と後悔してももう遅かった。 一転して気配を殺すことをやめた銀時は、まるでテレパシーのようにこれからどこにどんなことをするよー、という意思を伝えてくる。 それはもう、恐ろしいほど明確に。 おかげで実際に触れられる前に察知した幻覚が快楽を呼び起こし、その後直接の愛撫でさらに感じさせられてしまう。 土方はもう、2倍与えられる快感を追いかけるだけで精一杯だ。なのに。 「…相手の気配を探るのも大事だがよ。まず、てめぇがどんな状態かを正確に把握してねェと闘えねェぜ?」 もっともではある。いざ敵に向かって走り出そうとして、足を怪我していたのに気づかず転んでしまいました、では喧嘩にならない。 だが。 この状況で「自分のカラダの状態を把握しろ」というのは―― もう明らかにイヤガラセというか、土方を恥ずかしがらせようという銀時の魂胆が見え見えだ。 見え見えなのだが。 つい反射的に、自身の躯に神経を巡らせてしまった。 そして思い知る。 みっともないほど快楽をあらわにした己の状態を。 目隠しがじんわりと湿っているのは、きっと汗じゃなくて涙だ。目元だけじゃない。唇の端が濡れているのも、銀時が舐めたからではなくて飲み込みきれなかった唾液だろう。 さんざん弄られた乳首は充血して硬く尖り、ヒリヒリと痛みすら感じる。 微かに震える膝からは今にも力が抜けてしまいそうで、座り込んでしまわないためにか、自分でも気づかない間に最初よりも脚を開いて立っていた。 そして。 軽く裏筋に舌を這わされたり、先端の割れ目を吸われただけの花芯は、腹にくっつきそうなまでに反り返り、棹全体を濡らすほど愛液を零している。 今にも達してしまいそうだと自覚した瞬間。 ズクリ…と躯の奥が疼いた。 濃厚な愛撫に慣れてしまった躯が、銀時の熱い塊を欲して後孔をヒクつかせる。 (ヤバ、イ……) 気づかなければやり過ごすこともできただろうに(時間の問題ではあるが)、自覚してしまったら我慢なんてできっこない。 たぶん、それを見越して銀時はあんなことを言い出したのだろう。ムカつく男だ。 「……ど?」 ワクワクと目を輝かせて様子はどうだと尋ねている顔が見えるようだ。 「……てめェには関係ねェ」 もうギリギリ限界です、なんてわざわざ銀時に教えてやる義理などない。たとえ最終的に縋るしかないとしても。 「関係なくねェだろ。お前の自己評価が正しいかどうか、外から客観的に判断できんのは俺だけなんだから」 「…てめーの躯のことは自分が一番よくわかってる……」 「そーゆーコトを言ってて、ホントに自分のカラダが分かってるヤツはいねーんだよ」 確かに無茶をする人間の常套句だが。 この場合、分かってるから。イヤってほど分かってるから、そっとしといてくれ。 「お前、自分だけは違うとか思ってんだろ。チッチッチ。甘いね。今お前の全身がキレーなピンク色に染まってるのなんて、自分じゃ分かってねェだろ」 「……」 肌の色がなんだというのだ。そんなもの分からなくたって、何の差し支えもないじゃないか。 「だからちゃんと1コ1コ確認しようぜ?」 (いらねェッ。大きなお世話だっ) 「んじゃまず、チクビは?自己診断じゃどんなんなってる?」 乳首がどうなっていようが、戦闘に何の関係があるっていうんだ。 とか反論したところで、きっと銀時は聞く耳を持ってないだろう。なんだかんだと土方が口を割るまでご託を並べるに違いない。 「…………痛ェよ」 渋々答えてやったというのに、お気に召さなかったらしい。 「痛ェ、じゃあ状態を正確に把握してることにはなんねェだろ。どんな風になってて、どんな感じに痛ェんだよ」 (チクショー。マジで調子に乗りやがって…!) どんな状態かなんて知ってるクセに。聞くまでもないことを、あくまで土方の口から言わせたいのだ。 「硬くなってて、ジンジン痛ェよっ」 「ふーん……」 なんなんだ、そのつまらなそうなリアクションは。 「オマケで正解、って感じだなァ。もちょっと詳しく、真っ赤に熟れてコリッコリに尖ってる、くれェ把握できねェと。…ま、どんな具合にイタキモチイイのかは、本人にしか分かんねェことだけどな」 見えなくたってどんぐれェ尖ってるか分かんだろォ、と歯で挟まれくいっと引っ張られて、思わず背中が反り返る。 確かに。今は見えないけれど、いつもイヤってほど「見ろよ、おめーのチクビ、すっげェエロくて美味そう」と無理矢理見せられているので、どんな状態になってしまっているのかリアルに想像できるけれど。 分かってるからほっといて欲しい。 「ま、いっか。じゃ次。チンコは?」 「…………」 「えっ、もしかして、自分のチンコが今どんなんなってるか分かんねェのっ!?」 答えない土方に、わざとらしく銀時が驚いてみせた。 「しょーがねェなァ。じゃ、ヒントね」 「ひァッ…! ヤ、ヤメッ……!」 先端の小さな穴に爪を立てられ、トプトプと透明な雫が後から後から溢れ出る。 「ど?分かった?」 「……勃って、る」 ギリギリと食いしばった歯の隙間から搾り出すように土方が答える。 「うん。それで?」 「……濡れてる」 「どんくらい?」 「……びっ、しょり」 「てか、グチョグチョって感じだけどな。んで?」 「…………も、イキ、そ……っ」 白い喉を仰け反らせ、泣き声に近い声で限界を訴える土方に、ようやく銀時は少し満足したようだ。 「んー。ま、一応合格、にしといてやるか」 何をエラそうに、と心の中で反論する余裕すら、もはや土方からは失せつつある。 「じゃあ、これでラスト。後ろは?」 無意識にヒクン、と収縮してしまった器官。 「な、に…言って、んだ…… てめ、今日は、まだ、触って…ねェ、だろ……っ」 触れられてもいないのに、欲しくてヒクヒクしてるだなんて言えるわけがない。 「別に触ったとか指挿れたとかカンケーねェだろ? ただ、今どんな感じ?って聞いてるだけなんだからよ」 言葉で煽られただけで、唇を噛み締めていないと喘ぎが漏れてしまいそうだ。 「…別に、どうも、してねェ、よ…… 触られて、ねェんだ、から……」 こんなに息があがってるのに強がってみせても、無意味なのは理解してるけれど。それでも矜持というものがあるのだ。 しかし。 「あっそ。てこたァ、今日は後ろ弄んなくてもヘーキなんだ」 最近のお前は前だけじゃイケなくなってた気がしたんだけどなァ、などと嘯かれ、最後の意地がくじけていってしまう。 「や、だ……」 「わァったって。んな念押さなくても、今日はアナは弄んねェよ」 本当に、なんで。なんでこんな、底意地の悪い悪趣味な男に好き勝手させているんだろう、と絶望的な気分が押し寄せてくる。 だがそれ以上に、すぐ目の前に迫ってるのに届かない快楽のほうがはるかに切羽詰った問題だった。 「いじ、って… 挿れて、くれ……」 「無理しなくていーって。だいじょーぶ。ちゃんと前だけでもイカせてやっから」 挿れてくれ、とまで言わせておいて尚、このトボケぶり。目隠しがなければ間違いなく、殺意のこもった瞳で睨みつけてやるのに(もっとも、快感の涙に濡れた瞳でいくら睨んだところで、その効果のほどは甚だ疑問だったが) 「ちが… ほし… 中に、欲しぃ……」 「…マジで?」 コクコク、と小さく、だが何度も頷く。 「奥まで… 銀時……っ!」 切なげな声で名前まで呼ばれてしまっては、いくら銀時でもこれ以上意地悪はできない(いや、できるけど、まあいいか、って気持ちになった) 「わかった。挿れてやっから、もっと脚開きな」 「ん…… アッ!」 中指を第一関節まで埋められただけで、感極まったように土方が躯をくねらせる。 銀時が指を蠢かすたびに、クチュクチュといやらしく濡れた音が道場に反射して、視界を塞がれて鋭さを増した土方の鼓膜を震わせる。 「んっ… ふ、ぅっ……」 銀時に凭れかかり腰を支えられていなければ、もう立っていられそうになかった。 とめどなく溢れ出る淫液が、太腿までを濡らす。 それほど感じているのに、傍若無人に動き回っているようでいて巧みにポイントをズラしている3本の指が、絶頂を阻んでいる。なんとかイイところに当たるようにと、無意識のままに腰が揺れてしまうが、どうしても欲しいところに刺激が与えられなくて、もどかしさに涙が出そうだ。 「銀時… もうっ……」 これ以上焦らさないでくれ、という想いをこめて名前を呼ぶ。 「…もっと硬くて太ェのが欲しい?」 「ほし、ぃ……」 今度は大きくはっきりと頷く。 「それじゃ、コイツを挿れてやるぜ……」 期待にふるりと震えた躯が、次の瞬間強ばった。官能に蕩けた脳が、それでも何かを察して警戒信号を発している。 「ま、待てっ… ソレ、はイヤ、だ……」 ソレ、が何かは見えないから分からないけれど、ものすごくイヤな感じがする。 「あんだよ。硬くて太いのを挿れて欲しいんだろーが」 「けど、ソレは、イヤダ…っ!」 本気で拒絶するように必死に首を振る土方に「ちぇ」と銀時が舌打ちした直後、カランカランと固い音が転がった。 「て、めっ……!」 ヒトんナカになんてモン挿れようとしやがるっ、と。 竹刀の転がる音に、束の間理性が戻ってきた。 「オメーが具体的にナニを挿れて欲しいって言わねェから、太くて硬ェモンならなんでもいいのかと思うじゃねェか。せっかく道場なんだし、竹刀プレイもイイかなー、とか」 とんでもない言いがかりだ。 どこの世界に竹刀なんぞを突っ込まれて悦ぶ人間がいるというのだ。せめて、いつもその腰にぶら下げてる木刀にしやがれ。――って全然違う! 銀時の暴挙に、軽くパニックになっている土方に、今度は別のモノがあてがわれた。抗う間もなく、ズブズブと埋め込まれる。 「ャ、ァ… 抜けっ……」 「今度はちゃんとチンコの形してっだろうが。ウネウネ動くしよ」 動くからイヤなんだろうがっ。動かなくてもイヤだけど―― 縛られて不自由な腕で、唸りをあげて中で暴れるディルドを引き抜こうと土方がもがく。 だが当然、その程度で抜けるはずもない。 「抜けっ、てっ…!」 「なんだよ、もう。ワガママなヤツだなー。挿れろっつったり抜けっつたりよォ」 道具を挿れてくれなんて頼んだ覚えはない。 要するに、土方の口からはっきりとねだらない限り、違うモノを挿れ続けるということらしい。まだ他に何を用意しているのか想像するだに恐ろしい。これ以上妙なモノを挿れられてはたまらなかった。 まんまと思惑通りのセリフを口にしなければならない悔しさに歯軋りしたくなる。 「……抜いて、くれ。…お前の、が、欲しい………」 ついに懇願した瞬間。 にまあ、と銀時の気配がスケベたらしくニヤけたのが分かった。 普段、眼を開けてセックスしている時は(もっとも、挿入に至る頃にはもう、瞼を閉じてしまっていることが多い土方であるが)あまり表情を変えない銀時だが、こうして視界を塞いで気配だけを頼りにしていると、意外と雰囲気が動いているのが分かった。――ロクでもない変化ばかりだったが。 「なァんだ、俺のバズーカが欲しかったのかよ。だったら最初からそう言やァ、いっくらでも突いてやったのによォ」 嘘をつけ、と罵ってやりたいが、今はとにかく、疼いてたまらない最奥を貫いて欲しかった。 「ン、アァァッ!!」 焦らしに焦らされ、ようやく待ち望んだ銀時の凶器に深々と刺し貫かれた瞬間。 耐え切れずに土方は精を放ってしまった。 「ァッ… ちょ、ま…て……」 「待てねェ」 「ヤ、ア、アア…ッ!」 逐情している最中から手加減も容赦もなく抜き刺しされ、限度を越えた快感に気が狂いそうだ。射精中枢を刺激され続け、放ち終えても絶頂状態を維持したまま鎮まらず、呼吸すらままならない。 「たの、む… も、やめて、くれ… 死んじ、まう……」 息も絶え絶えな土方の様子に、ようやく銀時はグラインドを止めた。 ぐったりと全身を預けてくる土方は、日頃の横柄さがすっかり影をひそめ、とてつもなくエロ可愛い。 「欲しかったんだろ、これが。だったら死ぬほど達かせてやるさ。…全身で俺を感じろ」 熱く囁いて再び動きだした銀時は、もう土方がどんなに制止しても止まらず。 本当に何度も何度も「死ぬ」「死んじゃう」と叫ばされてしまった土方であった。 |
| ◆END◆ 破牙検事を論破した銀時なら土方なんてチョロいもんでしょう |
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