このお話はジャンプ本誌ならびに
DSゲーム『銀玉大争奪戦』のネタバレ要素を含みます
ご注意ください









複製フルコース



夜更けの副長室。
山崎からの報告を受けて、煙草の煙を吐き出すと土方は眉を顰めた。
「裏からくり家政婦だァ?」
「はあ」
いかにも胡散臭げな呼称に、土方の機嫌が下降する。
からくり家政婦と呼ばれるロボットの反乱により、江戸中が大パニックに見舞われたのは記憶に新しい。すべて廃棄処分命令が出されたものの、こっそり闇で出回っているとは土方の耳にも入っている。
しかし。
「裏だろーが何だろーが、ウチの管轄じゃねェだろ。奉行所でも見廻り組にでも任せとけ」
「いえ、それが……」
確かに前回の騒動の時、どういうわけか真選組に出動命令はくだされなかったが。
「どうも、戦闘用に改造された機械がからくり家政婦にカモフラージュされて、攘夷浪士の間で取り引きされてるという噂があるんです」
「なんだと」
言われてみれば確かに、あのからくり達は家政婦には不要としか思えないほど高い戦闘能力を有していた。それを、さらに強化したとなればもはや立派な武器、いや兵器になる。攘夷浪士たちが目をつけてもおかしくなかった。
そんなものが、家政婦と偽って要人宅などに送り込まれでもしたら大変なことになる。
「……わかった。調査を続行しろ。俺のほうでもちょっと調べてみる」
「わかりました」
頷いた山崎が部屋を出て行き、土方は新しい煙草に火をつけた。

それから数日。
山崎が裏からくり家政婦の取引情報を掴んだといって報告にきた。どうやら攘夷浪士だけでなく宇宙海賊までが一枚噛んだ、かなり大規模な組織犯罪にまで発展してるらしい。
悪事を働かれる前に未然に防ごうと、隊士十数人を連れて土方は現場へと駆けつけた。
すでに待機していた山崎が合図を送って寄越したのは、一見何の変哲もない普通の民家だ。
足音を忍ばせてドアに身を寄せ、土方が屋内の様子を窺う。確かに大勢の人間が蠢いている気配がした。
家の中に神経を集中したまま、ぐるりと隊士たちの顔を見渡す。どの顔も引き締まっていて、気合いが漲っているのがわかった。
眼で合図をし軽く頷くと、すらりと刀を抜き放つ。
「真選組だ!御用改めである!神妙にしろ、テロリストども!」
ドアを蹴破った土方を先頭に、どっと室内に踏み込んだ隊士たちだったが、一瞬後、茫然とその場に立ち尽くした。
「なん…だ……」
中にいた数人が、驚いたように突然の乱入者を見返してきたが、それ以上に土方たちの驚愕のほうが大きい。
徐々に戻ってきた思考力で、はじめは、山崎が(また)間違った情報を仕入れてきたのだと思った。
何故ならそこは、乱交場、に見えたから。
風呂場でもないのに、やたら肌色が目に付く。
とはいえ、まあ全然誉められた行為ではないが、強姦や輪姦というわけでもなさそうだし、真選組が取り締まるような筋合いではない。
「邪魔したな」
と言い残して去りかけ、ふと違和感を覚えた土方はあらためて内部をよく観察し直した。
(げっ……)
違和感の正体に気づき、内心で盛大に顔を顰める。無理もない。その場にいるのは全員男だったのだから。
(ホモの乱交場かよっ… 山崎のヤロー、つまんねーモン見せやがって…!)
後で絶対ェしめる!と拳を握り締めた土方は、次の瞬間、別の理由からぶるぶると拳を震わせた。
「なっ…なっ……!」
衝撃のあまり、マトモに言葉が出てこない。
「おや。ありゃァ土方さんじゃねェですかィ」
後ろからひょこっと顔を出した総悟の言ったとおり。
全裸で、あるいは拘束具を身に付けたり、いかがわしいコスプレをして淫らなポーズのまま動きを止めている男たちは。
全員、土方の顔をしていたのだ。
いや、顔だけではない。身体つきも土方にそっくりだった。
だたし、その肌の色だけは本人とは似ても似つかない浅黒い色をしていたが。
――その土方もどきには見覚えがあった。
「ひょっとして『コピー土方』じゃねェですかィ」
「……のようだな」
記憶に新しい、宇宙海賊棒棒鳥の力を借りて陀絡が生み出した、忌々しい土方のコピー。色合いこそ異なるが、土方自身とほぼ同等の能力を持っていたはずだ。
何故そんなものがここに――
あれは確かに総悟が抹殺したはずなのに。
だがそんなことよりも、今は目の前のコピー土方のみっともなさのほうが遥かに気になる土方であった。とてもじゃないが正視に耐えない。これ以上、一分でも一秒でも見ていたくない。
「…総悟。構わねェから、あれ全部ぶっ壊せ」
「はいよ」
じゃきんっ、と総悟がバズーカを構える。
「って、俺じゃねェェェ!!!」
お約束通り、まずは土方に向かって一発ぶっ放してから、総悟はその場にいた全てのコピー土方を消し去った。

「……つまり、なんだ。裏からくり家政婦っつーのはガセで、実態は俺のコピーだった、と、そういうことか」
「は、はい……」
これ以上ないほど凶悪な顔をした土方にギッと睨みつけられ、山崎がすくみあがる。
だが、土方がそんな表情になってしまうのも無理はなかった。
あの場にいた男たちを尋問した結果、当初からくり家政婦の改造版だとされていたのは、実はコピー土方の闇取り引きだったことが判明したのだ。
確かに、土方のコピーであれば戦闘力も高いし、何より顔パスである程度は幕府の中枢まで入り込むことができる。もし十数人の土方が一斉に暴れ出したりすれば、恐らく手の施しようがないだろう。目の付け所としては悪くない、と言いたいところだったが。
彼らは攘夷浪士ではなくただの一般市民で、あの場にいた目的は、そんな大それた反社会的な破壊活動などではなく、性的欲求を満たすために土方のコピーを手に入れたかったらしい。
以前出会ったコピー土方やコピー銀時が、本人の人格はそのままで悪の手先になっていたように、創造主の命令には従うようできているということで。性格や言動は土方と全く同じでありながら、コピー土方は自ら進んで脚を開くのだという。
「あのツンエロっぷりがたまんねぇんだよ」
と男たちは口を揃え、まるでお前も同じなんだろうと言いたげな顔で土方を眺めまわした。
その度に、怒りと羞恥と屈辱で目の前が真っ赤になった土方が抜刀して男たちに斬りかかろうとしては、隊士数人がかりで止められることの繰り返し。
できることなら男たち全員を斬り捨て、すべてなかったことにして忘れてしまいたかったが、まだ他にもコピー土方が出回っているとなれば、そういうわけにもいかない。
とにかく一刻も早く見つけ出せ、と山崎らにコピーの持ち主を探させては、土方は一人で回収(というか消去)に向かった。
不埒な目的で所有されているコピーが、どんなみっともないマネをさせられているか分かったもんじゃなかったからである。いくら土方本人とは無関係だといっても、顔と身体がそっくりである以上、そんなものを部下の目に晒すなんて我慢ならない。
――そして。
恐らく最後の一体がいるはずだという家の前に佇み、土方は複雑な想いを噛み締めていた。
本当にこれが最後なら、それは嬉しい。
しかし、本当にここにコピー土方がいるとは信じたくない。
階段の下から看板を見つめ、しばし躊躇った後、土方は2階へと上がった。
ノックして待つこと1分強。ガタガタと音がしてドアが開けられた。
「……よお」
「ひ、じかた……?」
あまりに思いがけない来訪者に、咄嗟にいつもの減らず口も叩けないようだ。
茫然とする目の前の男を、土方は素早く観察する。
洋服の上に羽織った着流しといういつものスタイル。慌てて着込んだようには見えない。
ということは、少なくとも真昼間からいかがわしい行為に耽っていたわけではなさそうだ。
「……邪魔するぜ?」
脇をすり抜け、草履を脱いで一歩家にあがったところで、ようやく我に返った銀時が慌てたように引き止める。
「ちょ、ちょっとちょっと。勝手にあがんないでくんない。おまわりのくせに不法侵入かよ。それともなんですか。捜査令状でもあるんですか、コノヤロー」
私服の土方が万事屋を訪れるという有り得ない状況にも、やっと普段の調子を取り戻してきたようだ。
「お望みなら令状とってもいいがな。大事になる前にさっさと吐いちまったほうが身のためだぜ?」
「あァ?なんのことだ。俺ァなんも疚しいことなんざないぜ」
銀時が、顔色ひとつ変えずに平然と嘘をつける男なのは土方とて了承済みだ。
「……フッ。とぼけたって無駄だ。あるんだろ。おとなしく出せや」
「だァから、なんのことだかサッパリわかんねェっつーの」
会話をしながら、土方は室内の様子を探る。
大の男一人分、そうそう隠せる場所などない。怪しいのは、あの押入れと隣の和室か――
まずは押入れのほうから確認するか、と思った土方の耳に、微かに物音が聞こえた。和室のほうからだ。
玄関の応対に銀時が出たということは、眼鏡の小僧もチャイナ娘も留守なのだろう。ならば。
銀時の制止を無視して、スパンッと襖を開け放った土方の目に飛び込んできた光景に、元々上がり気味の眦がさらに吊り上がる。
「て、ンめェェ……!」
全裸の上に申し訳程度に黒い着流しを羽織り、片手で花芯を扱き、もう片方の手で秘部に突っ込まれた淫具を抜き挿しするコピー土方のあられもない姿。
そして、大きく脚を開いたコピーの前には座布団と飲みかけの缶ビール。
つまり銀時は、コピー土方の自慰をサカナにビールを飲んでいた、ということだ。
土方の全身から、すさまじいほどの怒りのオーラが立ち昇る。
「ままま、待てっ!ゴカイだっ!これには深〜いワケがっ!」
「問答無用ッ!!」
目にも止まらぬ剣捌きで白刃を一閃。瞬時にコピーの姿は掻き消え、後には畳の上でブブブ…と淫猥なモーター音をくすぶらせるバイブレーターが転がっているだけだった。


それから数週間。
「ア……、ア……、ンアッ!」
自分でも何故こんなことになってしまったのか分からぬままに、あの日のコピーとまるで同じ格好で、銀時の目の前で自慰に耽る土方の姿があった――


◆END◆

コピー土方欲しい!からくり土方でもいい!


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