覆面教師 〜服部篇〜 |
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風が気持ちいい季節になった。 特にこの夕暮れ間近に吹く風は爽やかで、一日の疲れを全て吹き飛ばしてくれるようだ。 目を閉じてフェンスに凭れ、服部が癒しの風に身を任せていると、背後でガチャリと屋上のドアが開く音がした。 誰かが自分と同じように一息つきにきたのだろうと気にもとめず、振り向きもしなかったのだが。 「……先生」 小さな声で呼びかけられ、はっと視線を後ろに向けると、生徒が一人少し離れた位置に立ってじっと服部を見つめていた。 真摯な視線でありながら彼の全身からは迷いのオーラが漂っていて、珍しいなと服部は感じる。 常にしっかりと顔を上げ、一心に前だけを見つめているような生徒なのに。もちろん、迷うことも悩むこともあるのだろうが、それを表に出すのを潔しとしない性格だと思っていた。 そんな彼が、こんな風に思いつめた表情で服部に声をかけるなど、もしかしてよほど困った事態にでも陥っているのだろうか。 「どうした?土方」 優しい声で名前を呼ばれて、土方が驚いたようにわずかに目を見開く。 担任でもなければ教科を受け持ったこともない服部が自分を知ってるとは思ってなかったのか。この学校の関係者ならば、教師だろうが生徒だろうが、出入りの業者だって土方を知らぬ者など誰もいないというのに。 たとえ生徒会長を覚えていない新入生や転入生でも、土方の顔と名前は知れ渡っていると言われるほどなのに。 だが、そんな自分の評価に疎いところも人気の秘訣なのであり、実に土方らしいといえた。 そんな、一面識もない(と土方は思っている)服部にわざわざ屋上で声をかけるなんて、一体土方の身に何が起こったというのか。 服部にはその内容がまるで推測できない。 「あの……」 言いにくそうにもじもじしている。全くもって普段の土方らしくない。 どんなに言いづらいことでも、必要とあればハッキリ口にできるタイプの少年のはずだ。 「あの、お、お体の具合は、いかがですか……?」 つっかえながら思い切って口にしたらしい質問がこれで、服部はますます疑問を深める。 確かに服部が職場に復帰して間もないから、質問自体は何らおかしくはないのだが、体調を気遣うのはそんなに訊きにくいことだろうか。まあ、病気が病気だからかもしれないが。 「うん、おかげさまで大分良くなったよ」 質問の意図は掴めないままに笑顔で答えたが、土方の表情は強ばったままだ。そして 「あのっ……」 意気込んで口を開きかけては黙りこんでしまうの繰り返しで。 どれほど時間が経ったことか。服部は自分でも感心するほど根気良く付き合ったと思う。もっとも、相手が土方でなければとっくに切り上げていたが。 「あ、あの…その…手術、しないと、治らない、んですか……?」 さんざん口ごもった末、消え入りそうな声で途切れ途切れながらも、ようやく本題に入れたようだ。 が、やっぱり何故これがそんなに尋ねづらかったのか分からない。 「いや?症状が軽いうちなら薬でも十分治ると思うよ。あと普段の生活とか食事にも気を配ればね」 すると、あからさまに土方はホッとした表情になった。 それでようやく「ははーん」と服部も合点がいく。 (そっか。土方、痔になっちゃったのか。んで、入院→手術しかないのかと暗くなっちゃったワケだ) 確かに痔というのは、他人に知られたくない病ナンバーワンだろう。特に土方の年頃ならなおさらだ。 誰にも相談できず、病院にも行けず、一人で悩んでいたところに服部の噂を耳にしたといったところか。 もっと詳しく知りたいけど訊けない、という顔の土方の可愛らしさに免じて、服部は進んで情報を開示してやることにした。 「まず一番の大敵は便秘かな。便秘にならないよう、普段から規則正しい生活、適度な運動、食物繊維たっぷりの食事」 この辺は土方なら楽々クリアだろう。武道をやっているだけあって折り目正しい生活を送っているように見える。 「それから、刺激物は良くないな。香辛料とか特にダメだ」 どちらかといえば土方は辛党っぽいので、しっかり念を押しておく。 「…マヨもダメですか……?」 世にも哀しそうな顔で土方が尋ねる。 「マヨ?あ、マヨネーズ?うん、大丈夫じゃない?」 好物に駄目出しをされなかったためか、やっと少しだけ笑みのようなものを唇の端に浮かべた。 (うわ、嬉しそう。そっか。そういや凄いマヨラーだって噂だもんな) 自分が土方を喜ばせたような気がして、なんだか服部まで嬉しくなってくる。 「あとは、常に清潔を心がける。シャワーよりなるべく湯船に浸かって温める。トイレもできればウォシュレットがいいんだけどね」 生憎この学校にウォシュレット付きのトイレはなかったが、服部の一言一言を真剣に頷きながら聞いている。 「薬…って、普通に薬局で売ってるんですか……?」 「うん。ホラ、CMとか見たことない?ボラ〇ノールとかプリ〇Sとか」 聞き覚えがあったのだろう。「ああ」と納得したような表情をした。 「でも最初は結構恥ずかしいんだよね、店員さんに『痔の薬ください』って言うの」 慣れちゃえば全然どってことないんだけどね、と付け加えてみたが、店で薬を求めてる状況を想像したのか、土方の頬が微かに赤らんだ。 「ま、そういう人のために通販ってテもあるんだけどね。新聞とか注意して見てるとたまにに広告出てるから。ヒサ〇大〇堂とか、聞いたことあるでしょ」 たぶん土方はこの方法を選ぶだろうと思いながら教える。服部自身、最初はサンプルの取り寄せだったし。 真っ暗だった見通しが少しは開けたのか、土方の表情がだいぶ明るくなってきた。 その反応がとても素直で可愛らしかったので、服部は一つ提案をしてみることにした。 「俺が使ってた薬で良かったら、余ってるから少しわけてあげようか?」 言ったとたん土方の顔がパァッと輝く。いかにこの問題で悩んでいたかが窺える反応だった。 (うーん。土方って見るからに健康優良児っぽいもんなァ。怪我はともかく、これまで病気らしい病気なんてしたことなくって、どうしたらいいか分かんなかったんだろうなァ) 「でもそうしたら先生の分が……」 本気で困ってるんだろうに、それでもちゃんと相手を気遣えるのが、土方が優しい子だという証明だろう。 「うん、俺はもうほとんど治ってるし、全部あげるわけじゃないし。ちゃんと病院で出されたヤツだから、市販の薬より効き目はいいと思うよ」 「それじゃ、あの… イタダキマス」 「うん」 にっこり笑ってやったら、土方の肩からストンと力が抜けた。 その様子を眺めて微笑みながら、ふと上着のポケットに手を入れた服部が「あ」と声をあげた。 「……?」 わずかに首を傾げる仕種も常になく可愛らしい。 「ちょうど今、まだ封開けてないヤツ持ってたよ。これあげる」 ポケットから取り出した真新しい無地のチューブを土方に向けて差し出す。 「ありがとうございます……?」 受け取ろうと土方が腕を伸ばしかけたところで、何故か服部は薬を手のひらに握りこんでしまった。 「塗り薬とはいえ、一応俺用に処方されたモンだから土方に使っても大丈夫かどうか心配だし、使用上の注意を説明がてら、ちょっと診てあげようか?」 「えっ……///」 土方の顔が真っ赤に染まる。まあ、当然かもしれないが。 (ウブだなァ。男だったら、ケツの穴なんか見られてもどってことない、ってヤツも結構いると思うけど) もっとも、土方がそういうタイプなら、とっくに病院に行っていただろうが。 「でも、あの……」 「自分じゃ見えないトコだから、患部に上手く薬塗るにはコツがいるからね。教えてあげるよ」 そんな風に言われてしまうと断りにくい。といって、ハイどうぞと差し出すこともできず、土方はもじもじと戸惑っている。 「恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。俺、見慣れちゃったから。入院してる間ってヒマだからさー、患者みんなで見せ合いっことかすんだよ」 男っていくつんなってもバカだよねー、と明るく笑い飛ばし土方の緊張を解こうとするが、ガチガチに固まった身体はリラックスとはほど遠い。 「恥ずかしかったら目つぶってていいよ」 いつの間にか背後に回りこんだ服部が、ウェストを抱え込みながら耳元で囁いた。 反射的にぎゅっと土方が目を閉じたのを確かめて、ゆっくりとベルトに手を伸ばす。 カチャカチャとバックルを外す音がやけに大きく聞こえる。 ボタンが外れファスナーが下り、ズボンをわずかに下げられて涼しい空気が素肌に触れて、ようやく土方はここが屋上であったことを思い出した。 こんな所でいくら診察目的とはいえ教師にズボンを下ろされているのは、なんだかもの凄くいたたまれない。 さっきはとてもそこまで気が回らなかったが、せめてどこかの空き教室か保健室にしてもらえば良かった。だが服部は全く気にしていないようだ。 「ちょっとそこの壁に手をついて上半身を軽く折ってくれる?」 くいっと後ろに腰を引かれ、自然に服部に言われた姿勢になる。 「ぁっ……」 スルリ、と下着が剥かれピクッと下半身が竦んだ。 「うわー、綺麗なお尻だねー。こんな綺麗なお尻、見たことないよ」 「あ、あの……」 スベスベと撫でまわす手から逃れようというのか、土方が細い腰を捩る。 「ああ、確かにちょっと切れちゃってるね」 尻の肉を掴んでくいっと左右に広げれば、隠されていた秘孔が露わにされたのが分かる。そこにじっと注がれる服部の視線も。 「うん、でもこれぐらいだったら大丈夫。無理しなければすぐに治ると思うよ」 返事ができないのか、耳まで赤く染めた顔を小さくコクリと頷かせた。 「薬を塗る時は、まず患部を清潔にすること。風呂あがりなんかが一番いいんだけどね」 「ヒァッ!?」 突然叫び声をあげて、土方が大きく身体をくねらせた。 「なっ、なに、をっ……!?」 「ん?だから薬塗る前にお掃除をね。自分でやる時は洗うとかウェットティッシュで拭くとかしてね」 「そん、なっ… やめ…くだ、さっ… きたなっ……!」 なんとか逃れようともがくのだが、身体に力が入らなくて思うように動けない。 何しろ、そんなところを舐められるのは生まれて初めてだったので。 「大丈夫。土方のココ、全然綺麗だから」 舌でくすぐるように返事をされ、白い下肢がわななく。 腿まで濡らすほどたっぷりと唾液で清められた頃には、服部に腰を支えられ壁にすがりついてようやく崩れ落ちるのを堪えているような状態だった。 「じゃあ薬塗るよ?」 チューブから指の腹に搾り出した薬を、切れて赤くなっている患部に丁寧に塗り込めていく。 「あ、ふっ……」 「アナルの周りに塗れたら、今度は中にもね……」 再び薬を絞ると、ツプリ、と唾液と薬で濡れそぼる土方の後孔に中指をうずめた。 「ヤ、ァッ……」 薬を塗る、という行為からすれば当然なのかもしれないが、ごく小さな異常も見逃さないようじっくり丁寧に襞をなぞられ、耐えかねた土方が激しく身悶える。 治療をされているだけのはずなのに、触れられてもいない土方の性器は半ば勃ち上がり力強く脈打っていた。 「そうそう。痔を患ってる時は特にアナルセックスには細心の注意が必要だよ」 背中からのしかかられるようにして告げられた単語に、元々上気していた土方の全身がこれ以上ないほど真っ赤に染まった。土方のソコが切れてしまった原因を見抜かれてしまったのが分かったからだ。 「だから先生が、アナルに優しいセックスの仕方、教えてあげるね……」 両腕に挟まれた頭を必死にぷるぷる振るが、服部に聞き入れるつもりは毛頭ないようだった。 「まずは、挿入の前にとにかくじっくり丁寧に解さなくちゃ。まだ硬いうちに無理矢理挿れると切れちゃうからね。やっぱ思いやりと愛情は大事だし。解す時にはローションとかクリームとか、潤滑剤も必需品だよ。アナルにも指にもたっぷり塗ってやれば、ホラ、こんな風に痛みもなくスムーズに出し入れできるだろ?」 そう言いながら薬でベタベタの中指をぐぐっと土方の奥深くまで差し入れる。 「ンンッ……!」 「ね?痛くないでしょ?こんなにぎゅうぎゅうに締め付けてても、どんなに激しく動かしたって全然スムーズだもん」 自分の発言を証明するかのように、言葉通り激しく指の抜き差しを繰り返す。 「指、も一本増やしても大丈夫だよね?」 今度も土方は首を横に振ったが、服部は全く意に介さない。人差し指にもたっぷり薬を塗りつけるとヌプ…と土方の中に埋め込んだ。 「あっ、あぁっ……ン!」 二本の指が好き勝手に動き回るたびにクチュクチュと濡れた音が聞こえる。意外にも服部の指が長くて節ばっているのを初めて知った。 「せ、せんせっ…もぅっ……!」 「うん、もう一本ね」 違う、と否定する間もなく三本の指に順番に違う動きで前立腺を刺激され、土方に堪える術はない。 「ヤッ… ィ、ク……ッ!!」 腰をぶるりと震わせて吐き出してしまおうとしたのに。 「まだダメだよ?」 「な、んでっ… ゃ、だぁ……」 射精寸前で塞き止められてしまい、達けない苦しさに土方が涙をぽろぽろと零す。 「せっかくイイ具合に解れてきたのに、イッちゃったらまた締まっちゃうだろ?とろとろに蕩かせて解して奥まで欲しくてたまんなくなってからインサートしないとね」 どう?欲しくなってきた?などと最奥の一番感じる部分をぐりぐり弄られながら問われれば頷く以外ない。 「ほ、ほしィ…… イれ、てぇ……!」 「うん、そう。そんな感じ。覚えた?潤滑剤を使って丹念に解す。焦りは禁物。で、達く前にペニス挿入。これがお尻に優しいアナルセックスの遣り方だよ」 手順のおさらいをすると指を引き抜き、服部は身体を離した。 まさか。 まさか、説明が終わったからとこの状態で土方を放り出すつもりなのか。 「せん、せぃっ…!」 焦った土方が回らない舌で懸命に服部を引き止める。 「ん?」 土方の訴えたいことなど分かりきっているだろうに、とことん意地が悪い。もっと人の好い人物だと思っていたのに。 「おねが…せんせ…… シて……!」 涙声の哀願に、うっすら鬚をたくわえた口元がニヤリと笑う。 「先生の、土方に挿れちゃっていいの?」 前髪をかき上げて尋ねる動作は優しいが、口調には毒にも近い劣情が滲んでいた。 「ぅん… せん、せ、の… ほし……」 「イイコだ、土方……」 あらためて震える腰をしっかり掴むと、服部は物欲しげにヒクついている秘孔に狙いを定めた―― |
| ◆END◆ 服部・舌先三寸・全蔵 |
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