フラワーグルーム



警察庁長官ともなれば、結構なんだかんだで忙しい。
単なるダメ親父にしか見えない松平だが、それでも滅多に家族との団欒の時間など持てないのが現状だ。
そんな貴重で久々の最愛の娘とのディナータイムだというのに、肝心の栗子ときたら先ほどからマヨネーズのチューブを握りしめたままぼうっと上の空で、松平の話なんて全然聞いちゃいない。
「栗子ー。おーい、栗子ぉ。どうしたんだあ? 何か悩みがあるならパパに相談してごらん。パパは栗子のためだったら、なんだってするよー」
聞こえているのかいないのか。悩ましげにじっとマヨネーズを見つめ、栗子は一際大きな溜息をついた。
「あのかたは…… マヨラ13様は、今頃どうしていらっしゃるでございましょう……」
「!!」
まさかの告白に、巨大な衝撃が松平を襲う。薄々そうじゃないかと予想していても、いざ愛娘自身の口から聞かされてしまえば、やはりショックなものはショックなのである。マヨラ13の正体を知っているので尚更だ。
「栗子…… お前、まだあの男を……」
「もちろんでございまする。あんな素晴らしいかたとは、きっともう2度と会えないでございまする」
そりゃあ、あのチャラ男に比べれば土方のほうが断然マシではあるけれども。それでも所詮五十歩百歩。断じて娘との交際を認めるわけにはいかない。
「ダメだ、ダメだ。パパは許さないぞ。あんなヤクザみたいな男、パパは絶対認めないからな」
「ヤクザじゃないでございまする。あのかたは愛の戦士でいらっしゃいまする」
「栗子ぉ。お前は騙されているんだ。あの男はな、殺し屋なんだぞ、殺し屋」
「いいえ、違いまする。殺し屋のフリをした愛の戦士様でございまする」
(トシ… コロス。切腹だ、コラァ)
すっかり娘をたぶらかしてくれた部下の顔を思い浮かべ、殺意を滾らせる父の心も知らず、栗子が切なげに目を伏せる。
「ああ…… せめて、もう一度、お会いしたいでございまする。マヨラ13様……!」
(ううっ……)
土方への憎しみとは別に、健気な娘の様子に、松平の胸が痛む。
何しろ松平はマヨラ13の正体を知っているどころか、その気になりさえすれば娘に会わせてやることも容易い。
いや、会わせるだけでなく、結婚させてやることだって――
局長である近藤がバブルス王女と結婚式まで挙げかけたように、土方も松平の命令には逆らえまい。
確かに、どこの馬の骨とも知れぬ男にくれてやるよりは、という気持ちもないわけではない。ああ見えて意外と真面目な男だし(少なくとも松平が夜遊びに誘っても、近藤と違って羽目を外した姿を見たことがない。モテるくせに)それなりに常識人だ。とりあえず他の連中と比べれば、マシな部類であることは間違いない。
しかし。
(いいや、やっぱりダメだ。あんないつ死ぬかもしれん仕事をしてる男なんてダメだ!)
だがそれは、松平が職権を乱用すれば、土方を危険の少ない事務系の職場に異動させることで回避できる。幸い土方は事務的能力にも優れているので、書類仕事も難なくこなすだろう。現場至上主義の本人は極めて不本意だろうが。
なんだったら、松平の秘書とかにでもしてやってもいい。
いやそれよりも、むしろさっさと殉職してくれたほうが、栗子が自由の身になれるからいいかもしれない。
とはいえ、若くして未亡人になってしまったら娘が不憫だとも思う。
(そうだ、それにヤツなら……)
娘が18歳になるまで、いや20歳に、いやいや一生、夫婦の営みは禁止だ、と言ったら律儀に守るんじゃないだろうか。
(だからって浮気は許さないぞ。栗子を泣かせるようなマネしやがったら蜂の巣にしてやるぜ。楽に死ねると思うなよ)
男なんて所詮は下半身の誘惑には勝てないものだと知ってはいるが。
けれども、なんだか考えてみればみるほど、土方は娘の婿に相応しいような気がしてきた。
そう、婿だ。
断じて娘を嫁にやるのではない。
婿となれば、屯所を引き払って土方は松平の家に住むことになるだろう。
しかも、松平の目を盗んで夫婦の営みなどしないよう、松平の部屋で寝起きさせて監視したりして。
つまり職場だけでなく自宅でも、四六時中一緒にいるわけだ。
土方と共に暮らす。
寝起きとか風呂上りの土方が目の前をウロウロしてたりするのだ。
それはなんだか、とても甘美な幻想だった。
あの土方が、あの顔で、あの声で「お義父さん」とか松平を呼んじゃったりするのだ。
それはとてもキケンな香りがする。
(『お義父さん。食事の用意ができました。今日はお義父さんのお好きなハモの天ぷらです』
な〜んて呼びにきたりしてなっ。んで俺が
『てめェ、なんだそのカッコは。もっと新婚らしい格好ってモンができねぇのか』
とかって咎めると、黒いエプロン姿の土方が戸惑うんだよ。で、
『新婚なら新婚らしく、ちゃんとこーゆーのを着やがれ』
ってフリフリピンクのエプロンとかを俺が取り出すと、すげーイヤそうな顔しやがるから、そこですかさず
『とーぜん、まっぱだかの上にエプロンだけ着けるんだぜ。いわゆる裸エプロンっちゅーヤツだな。ちゃんと言われた通りにしねェ限り、俺はおめェの作ったメシは絶対食わねェからな』
って脅せば、きっとすっげー不本意そうな恥ずかしそうな顔しながら、裸エプロンするんだよ。うん、アイツはそーゆーヤツだ)
段々妙な方向へと妄想が暴走しだしていることに、松平はまるで気がついていない。
(後ろ姿がたまんねェだろうなあ、おいぃ。白くてちっせェ尻がよぉ、こう、キュッと締まっててクッと上がってて、けどプリっとしててよぉ。あー、でも前から見るのもイイよなァ。ギリギリの裾からすらっとした脚がのびてて、ちょっとでも動いたら見えそうでよぉ。確かアイツの脚は近藤のヤローと違って、毛もなくてキレーなもんだったしなぁ。
つい俺がじろじろ眺めてると
『あ、あんまり見ないでください……』
なんてもじもじ恥らっちゃってよぉ。堪えるみてぇに裾きゅっと握っちまって、なおさら見えそうだっつーの。
でもって夜には
『お義父さん、お背中流します』
ってタオル一枚で風呂入ってきて、甲斐甲斐しく俺の背中流してくれちゃったりするんだよ。
『おう、お返しだ』
つって、今度は俺がヤツの背中流してやって。手が滑ったフリしてケツをぺろんと撫でたりしたら
『アッ』
って真っ赤になったりしてなあ)
無意識のうちに、グフグフグフフフ…と不気味な笑いを漏らし、わきわきと指が妖しげな動きを見せている。
栗子はとっくに父を見限って出て行ってしまっていた。
(いやいや、しかし、アイツが一人で風呂入ってる間に、まだ温もりの残るパンツに頬ずりしたり匂いを嗅いだりもしてみてェなあ)
もはや完全に変態である。
(夜だってな。何しろ栗子とのエッチも浮気も厳禁だから、きっとすげェ溜まってんだろ。やっぱ俺が責任もって解消してやらなきゃなあ。
隣で寝てるトシの布団にもぐりこんで、後ろからぎゅっとナニを握ってやったら
『や、やめてください、お義父さんっ』
なァんて、弱々しく抗ってみせたりしてよォ。煽ってんのかっつーんだよなあ。
『遠慮するこたァねえよ。溜まってんだろぉ。お義父様が優しく処理してやっからよぉ』
『い、いけません、お義父さんっ……!』
いけません、なんて言っちゃって身を捩ってもよぉ、俺様のフィンガーテクでまたたく間にムクムク勃起だぜ。
『こんなにヌルヌルにしといて、何がいけないんだァ?』
『アッ、アッ…… だめ、だめですっ……!』
真っ赤になってイヤイヤって身悶えたりしてよォ。かーっ。たまんねェな、おい)
松平の脳内ですでに土方は、顔だけが土方の完全な別人になり果てていた。
(『遠慮するこたぁねぇんだぞ。俺たちはもう親子じゃねぇか』
『あっ… んああっ…』
『どうだ。気持ちイイだろぉ?』
『ァン… イイ… イイです、お義父さんッ……!』
扱く手ェ速めてやりゃあ、可愛くプルプル震えてよぉ。
『あっ… お義父さん… もう、イかせて……』
涙でうるうるっと潤んだ目で縋るように見つめられたら、お義父さんひとたまりもないよ。
『構わねぇよ。お義父様の手の中にたっぷり子種出しちまいなァ』
『ヤッ… ァン… 出るっ、出ちゃうぅぅぅ!』
ドクドクドクっと、俺の手の中で迸る熱いトシのザーメン。
『見ろ。やっぱり溜まってたんじゃねぇか。こんなたっぷり出しやがってよぉ』
ベタベタの手のひらを目の前に突きつけてやれば、首まで真っ赤になったトシが色っぺくてよぉ。でもって、俺がなんも言わねぇうちから『お返しです』とか言って、自分から俺のを旨そうにしゃぶるんだぜ。
『なんだなんだ。上手ェじゃねぇか、おい。慣れてんのかぁ?』
なんて俺が皮肉っぽく言えばきっと、泣きそうな顔して懸命に首を横に振ったりして、それがまたソソるんだよなあ。
咥えさせて、飲ませるのもいいけど顔にかけんのも捨てがたいぜ。なにしろあのツラだからなあ。汚してみてぇっつーの。もう絶対ザーメン似合うから。エロエロだから。
で、そこまでいったら、後は突っ込むしかねぇよなァ。こう、両方の足首を掴んでガーッと脚おっ広げさせてよォ。
『あっ、だめっ。いけません、お義父さん… それだけはっ……!』
とかって、一応形ばかりの抵抗をしながら、誘うように腰が揺れちまうのがまたヤラシーんだよ。
『大丈夫、大丈夫。お義父様に全部ゆだねなさい』
宥めるように髪の毛でも撫でてやりゃあ、うっとり目ェ閉じてカラダの力抜いて、受け入れ準備オッケーだ。
『入れるぞ?』
先っぽをアナの入り口にぐりぐり擦りつけりゃあ、恥らうみてェに頬染めながらも、ちゃあんと腰を浮かせて自分から脚を広げる。
めりめりって感じで俺のチンコがトシの中に埋まっていく。
『ハ、ンッ… 入って、くる… お義父さんのが、俺の、中、にっ……』
むちゃくちゃ色っぽい歓喜の声をあげながら、トシが俺を受け入れる。すげー狭い。狭くてキツくて、ぎゅうぎゅうに締め付けられて、その気持ち良さといったら半世紀近いオジさんの人生の中でも最高級だ。
『ァッ… お義父さんの、おっきいので… 俺の中、が、いっぱいにっ……!』
俺の腰に脚を絡みつかせ、トシがぐいぐいと腰を押し付けてくる。
うおおーっ。気持ちいい。気持ちいいぞ、トシーっ。オジさん昇天しちゃうよー。
『出るっ。出るぞおっ』
『出してっ。俺の中にお義父さんの子種をいっぱい出してくださいっ』
『おお、出してやるっ。おめェも出せや、トシッ!』
『ん… イクッ。イクイクゥッ。俺、も、イっちゃうぅぅぅ!!!』
思いっきり背中を反らせてトシがイッた瞬間、強烈にヤラシイ締め付けが俺のムスコを襲う。
『うおおっ』
トシの奥深くに迸った俺のザーメンは、ここ数十年なかったほどの勢いと量だったんじゃねえかと思うぜ。
しかも、1回出した直後だっつーのに全然萎えてねえ。むしろ益々ビンビンになってんじゃねえか、これ。こんなん何年ぶりだよ、オイ。
いやいやいや。オジさんまだまだ現役バリバリだけど。絶倫だけど。そんでも、少しは休憩とか必要だったりするわけよ。
それがどうだよ、これ。全然足りねえって痛いぐらい俺のムスコが訴えてやがる。
なんだコイツ。天然の精力剤かなんかか。
『トシィ。おめー、こんなもんじゃ全然足りねぇだろう? どーせ明日は2人とも非番なんだ。おめーが満足するまでいくらでも付き合ってやるぜぇ』
キレイな背中のラインを見ながら後ろから突っ込んでもみてぇし。俺の上に騎っかって髪振り乱してるトシっつーのも見てえしな。
ったく、どんだけエロエロなんだよ、コノヤロー)
いつの間にか、妄想を越えて現実と混同してしまっている松平だった。

果てしなく妄想を繰り広げ、ようやく我に返った松平は、本気で土方と栗子を結婚させるべきか否か、真剣に悩むのであった――


◆END◆

とっつぁんの妄想力は銀さんとかより弱いと思います


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