LEVEL3



始まりは騙ましうちのようなものだった。
自他共に認めたくもないが認めざるを得ないほど似た者同士であり、こと銀時に対しては極めて単純で分かり易い反応をする土方を嵌めるのは、その気になれば容易いことで。
その並外れて意地っ張りな部分を刺激してやれば、頭では墓穴と分かっていても挑発に乗らずにはいられないあたり、銀時にとっては極めてラッキー、土方本人にとっては実に損な性格をしているといえるだろう。
思考回路も行動パターンも似ているから、根っこの部分で互いに抱いていた感情も近かったのかもしれない。
罵声は山ほど浴びせられたが、本気で嫌そうな顔をされたことは一度もなかった。と思う。
おかげで最初の時以降も、銀時の思惑通り実に順調に事態を進行させることができた。

第一段階としてまず、とにかく土方にはこの新しい関係に慣れてもらわなくては始まらない。
顔を見ればツノ衝き合わせ喧嘩に発展していたのは昔の話。今では少なくとも週に2回か3回は夜を共にする仲なのである。
土方の、特に銀時に対して発揮される負けず嫌いな部分を上手くつつけば、布団に引きずりこむのはさほど難しくなかった。そして、気丈な精神とは裏腹な快楽に弱い身体は、簡単な愛撫でもまたたく間に蕩けて柔らかくなる。
思い通りにならない自分の肉体に、悔しそうに歪められた顔もまた絶品だったし。その顔が、徐々に理性を失い快楽に陶酔していく過程も、たまらなく銀時をゾクゾクさせる。
そうして、銀時と肌を合わせることに土方が全く抵抗を感じなるなるまで、ひたすら優しく甘く、けれど濃密に何度も何度も愛し合った。
とはいえ恥じらいに頬を染め唇を噛み締める土方は超絶可愛かったので、抵抗感を奪いつつ羞恥心は残すという、微妙な匙加減にかなり苦労したが。
苦心の末、どうにか銀時好みの精神状態にすることに成功したところで、いよいよ本格的に土方の調教スタートだ。
まずは土方の身体を徹底的に開発。
似た者同士はこんな面でも効力を示すのか。銀時には何故か、土方が感じる部分が手に取るように分かってしまう。ここはどうだ、と試した場所がどれも大当たりで愉しくてたまらない。
全身に散らばる性感帯の位置を把握できれば、あとはそれぞれがもっともっと感じやすくなるように仕込めばいい。
耳の後ろ、うなじ、背中、脇の下、腰のくぼみ、わき腹、臍のまわり、指の股、内腿、膝小僧、ふくらはぎ、足の指と足の裏。もちろん乳首や花芯、後孔、前立腺は言うまでもない。
一箇所を集中して、達けるようになるまでひたすら責め立てる。達するまで決して手を緩めず徹底的に。全てのポイントでそれを繰り返した。
土方からは何度も、もうやめてくれと泣きが入ったが、手加減は一切しなかった。何しろ、これから先まだまだ道のりは長いのだ。こんな初歩で停滞してる場合じゃない。
おかげで土方は、銀時が軽く指一本触れただけでも腰がくだけてしまうほど過敏になってしまった。
どこを責められても達けるエロい身体は銀時の理想だ。
それでも、町中など人目があるところでは真っ赤な顔をして涙目になりながらも、意地とプライドで踏みとどまる姿がまた、激しく銀時を煽るのだった。どこまで我慢できるのか、とことんまで追いつめてみたくてたまらなくなる。
そこで。
セックスに慣れさせ、極限まで性感を開発した銀時の次なる野望は、土方のほうから求めさせることだった。
誘えば拒まない、のではなく、土方の口から「ヤろう」もっといえば「抱いてくれ」と言わせたい。「銀時のが欲しい」とか「メチャクチャにしてくれ」とか、他にも聞かせて欲しいセリフはいくらでもある。それも素面の状態で。
羞恥に頬を染めながらも、ねだらずにはいられない土方はどれほど色っぽいことだろう。
そのためにはどうしたらいいかと考えれば、やはり欲しくて欲しくてたまらなくさせるのが一番だという結論に達した。疼いて仕方のない身体を持て余して銀時に縋ればいい。毎日でも毎晩でも、時間も場所も厭わないほどに。
その手段として銀時が思い立った方法は条件反射だった。名付けてパブロフの犬ならぬ「銀さんのトシ」計画(語呂が悪いのは気にしない)
Hも中盤を過ぎ、土方が正気を失って意識が朦朧としてきた頃合いを見計らって、挿入したまま彼がいつも吸っている煙草に火をつける。
そして激しく奥を突き上げ、土方が達く瞬間には必ず、思い切り煙草の煙を吸わせた。
それを何度も繰り返していると、土方は煙草の臭いを嗅いだだけで銀時に貫かれて果てる快感を思い出し、欲情するようになってしまったのである。
同様の方法でマヨネーズでも仕込まれ、土方は2大嗜好品を口にするたびに、どうしようもなく身体が火照ってたまらなくなった。
しかもタチが悪いことに、必ず最奥を深々と抉られる幻想を伴うので、自分で慰めただけではどうにもおさまらない。しかも、正気を失っている間にされたことなので、何故そんなことになってしまったのか分からないのだ。
そもそも煙草やマヨネーズが官能の炎を掻き立てているのだと気づくまでにもだいぶ時間がかかり、一日に何度も嵐のような劣情に襲われて、土方は本気で銀時に抱かれすぎて自分の身体がおかしくなってしまったのだと絶望的な気分になった。
自分ではどうにも鎮められない熱のやり場がなくて、土方のほうから頻繁に銀時を呼び出すのは、まるで色情狂にでもなったようでたまらなく情けない。かといって到底我慢できるものでもなく、2日も銀時に触れられないと気が狂いそうになるのだ。
しかし、ただでさえ激務に忙殺されている土方である。どんなに銀時に抱かれたいと思っても、時間が許さない日のほうが多い(ましてや、一時間や二時間ぐらいで手早くパパッと済ませられるようなセックスではないのだから)
銀時とて、それは重々承知しているので不平を言う気はない。が、不安はある。
荒れ狂う欲情を宥めたい一心で、他の男に身体を投げ出したらどうしよう、と。
何しろ土方のまわりには、ちょっと誘えば大喜びでのしかかりそうな男共が、それはもうわんさか溢れているのだから。
銀時以外の男では満足できないよう仕込んでいるつもりだが、一人でするよりはマシだと考えてしまうかもしれない。背に腹はかえられないとか言うし。
そこで。
「奥がウズいて欲しくってしょーがなくって、けどどーしても時間がない時は、これを俺だと思って使いな」
そう言って前立腺専用アナルバイブを渡したら、真っ赤な顔をしながらも土方は黙って受け取った。心なしか安堵したような表情に、やはり相当危機的状況だったらしいと見当がつく。
こんなにプライドの塊の男でなければ、きっととっくに誰彼構わず尻を差し出していたに違いない。
(アブなかったぜー。感じやすくってエロくって、けど俺以外には股を開かねェ、ってのがやっぱ理想だもんなァ)
バイブなんて、所詮は緊急時のその場しのぎの代用品だ。銀時の愛撫に慣らされた土方の身体が、オモチャごときで満足できるはずがない。
という銀時の予想通り、時間が許す限り、というか無理矢理時間を作って、土方は銀時の元を訪れた。相変わらず、とても悔しそうな表情で、けれど抑え切れない期待に胸を高鳴らせて。
銀時のほうは、そんな土方の様子に意地の悪い光を目に浮かべると
「俺に会えねェ間、バイブ使った?」
自慰をしたかどうかを確認する。聞くまでもなく答えなど分かりきっているくせに。
小さく頷く土方に
「何回使った?」
「さ、3回……」
2日で3回、ということは夜だけじゃないってことか。にんまりと銀時の口元が緩む。
「3回で、おめーは何回イッたんだよ?」
「わ、かんねェ……」
泣きそうな顔で、ふるふるっと首を振る。質問に答えられないと、その分だけ銀時に焦らされると分かっているからか。
「数えきれねェぐらいイッたってこと?」
「…途中から、ワケ、わかんなくなった、から……」
消え入りそうな土方の声。とても捕り物中のドスの利いた声と同一人物とは思えないほどだ。
「オナニーで理性飛ばすって、とんだインランじゃねェか」
ますます土方の顔が歪む。否定したくともできないのが、恥ずかしくて悔しいのだろう。
「ンなにバイブが気持ちイイんなら、俺いらねェんじゃねーの?」
「んなコトねェッ!」
すでにギリギリまで追いつめられている土方が、必死に否定する。器具で事足りるなら、わざわざ銀時に会いに来たりしない。
「じゃ、俺にどうして欲しいんだ?ちゃんと口に出して言わなきゃわかんねェぜ」
言外に銀時を求める土方に、それはもう愉しそうにスケベオヤジ丸出しで恥ずかしいセリフを言わせようと強要する。
催促される度に土方は、屈辱に唇を噛み締めながらも
「お前が、欲しい」とか
「挿れてくれ…」とか
「…もっと奥までっ」
などとねだらざるを得なかった。でなければ意地悪な銀時は指一本触れようとはしないのだ。
もちろん、これは理性を保っている間の話で、正気を失くしてからは放送禁止用語のオンパレードだ。素面の状態の土方が聞いたら羞恥のあまり憤死間違いなしである。

そんな夜(非番の日は朝から)を幾度も幾度も繰り返し、やがて、どうやら煙草とマヨネーズを口にした時に欲情してしまうらしいと遅まきながら気づいた土方は、極力この2つを摂らないよう気をつけるようになった。(はからずも土方の健康状態改善に一役買ったことになり、むしろ感謝して欲しいぐらいだ、と密かに銀時は考えていたりする)
とはいえ、元が中毒といっていいほどヘビースモーカーの超マヨラーだった土方である。我慢にも限度というものがあり、しかもその限界点はかなり低かった。
煙草は吸いたいがセックスはできれば少し減らしたい。
そんなジレンマを感じること自体がすでに欲情に火をつけてしまう。
煙草を吸いたい、マヨネーズを食べたい、と思った時点で身体の奥が熱くなってくる。
まるで意のままにならない身体を抱えて途方に暮れる土方に、しかし銀時はさらなる罠を仕掛けた。
煙草やマヨネーズはそれでも多少は土方の意思でコントロールできるが、全く予期できない不意打ちでも欲情させたかったのだ。
本当は鍔迫り合いの音や血の匂いに反応させてみたいのだが、土方の職業でそれは命取りになる。戦いの真っ最中に、貫かれる快感を思い出したりして、一瞬でも気が逸れたらそれで終わりだ。そんな危険な真似ができるはずはない。
そこで、今年爆発的に売れた缶コーヒーのCMを録画しておき、土方が正気を失ってから延々とエンドレスでBGMがわりに流し続けてみた。
案の定効果は抜群で、パトロールの最中自動販売機でその商品を見かけたり、CMに使われている曲が商店街から流れてきたりしようものなら、激しく全身を揺さぶる官能の波に思わずその場にしゃがみこんでしまったこともある。
(突然かがみこんでしまった土方に
「副長!大丈夫ですか!?」
敵に狙撃されたのか、はたまた鬼の霍乱か、と慌てた隊士たちが
「いや…大丈夫だ…なんでもない……」
噛み締めた唇から搾り出されたような艶っぽい声に、また切なげに上気した顔に、今度は彼らが前かがみになってしゃがみたくなっていたのを、土方は知らない)
ただし今度は銀時も同様で、うっかり気を抜いてテレビを見ている時にそのCMが流れると、猛烈に土方に突っ込みたくなって困った。
それなのに土方が求めてこない時には。
さりげなく銀時が煙草の臭いを漂わせたり缶コーヒーを手土産にして会いに行ったりすれば、たちまち土方は腕の中に落ちてくる。
(カワイーもんだぜ…)

これにて土方の調教レベル3、完遂。


◆END◆

この人たちどこでえっちしてるんだろう。万事屋でも屯所でもないよな…


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