信賞必罰 |
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近頃の真選組の活躍といったら、それはそれは目ざましいものがある。 本業の攘夷志士摘発はもとより、殺人や強盗といった通常の凶悪犯の逮捕から人命救助まで。手広く幅広く警察活動に精を出す様は、集団で何か悪いものでも食べたんじゃないかというぐらい熱心で、市民は歓迎するとともに不気味がってもいた。 きっと単なる気まぐれか何か事情があるかで(たとえばボーナスの査定の時期だとか)、どうせ一時的なものさ、という意見が大勢を占めていたのだが、もう3ヶ月近くも真選組の精勤ぶりは続いている。もしかして本当に心を入れ替えて市民のために尽くす気になったのだろうか、と半信半疑ながらも世間の風当たりはだいぶやわらかくなってきた中。 今日も、局長・副長揃って長官室に呼ばれ、松平直々にお褒めの言葉を賜ったりしているのであった。 「どーしちまったんだ、お前ら。近頃やけに真面目じゃねェか」 「はっ。それが最近、隊士たちの士気が非常に高まっておりまして」 松平に誉められ、誇らしげに顔を輝かせる近藤とは対照的に、何故か副長である土方の表情はくもっている。 元々ちょっと誉められたぐらいで浮かれる性質ではないが、それにしてももう少し嬉しそうな顔をしても良さそうなものなのに。 だが、その不本意極まりないといった表情にはそれなりの訳があるのだった。 その理由とは、3ヶ月ほど前にできた真選組の新しいルールにあった。 局長である近藤だけがその存在を知らない、いわば裏規則とでも呼ぶべき、それ。 隊士たちのあまりのダラケぶりと凡ミスの連発に怒り心頭に発した土方が、特大の雷を落とした。土方の小言には慣れっこの部下たちですら思わず竦みあがってしまうほど、この日の激怒ぶりは凄まじかったのだが。 どんなに土方が怒り狂っていようとも、ものともしない強者もいるわけで。 いわずと知れた、土方をおちょくることに命を賭けている、かもしれない男、一番隊隊長である。 「真面目にやれ、真面目にやれって言いますがねィ。真面目にやったら、なんかいいことでもあるんですかィ」 機嫌の悪い時の土方にこんな発言をかますなんて、一体沖田の神経はどうなっているんだっ、と。本人は楽しいかもしれないが、周りを巻き込むのはやめてくれーっ、と。 殺気というか凍気を全身から迸らせる土方に縮みあがりながら、その他大勢の隊士たちは土方と沖田の遣り取りを見守った。 「何がいいことだっ。仕事を真剣にやるのは当たり前だろうがっ!」 「相変わらず分かってやせんねェ。いまどき『仕事だから』なんて流行りませんぜ」 「流行るとか流行らねェとかじゃねェだろうがっ!」 仕事ナメんのも大概にしろっ、と。もう何度聞かされたか分からないセリフを、また頭ごなしに怒鳴られる。 「だからそれが分かってねェって言ってるんでさァ」 やれやれ、と肩をすくめる沖田を睨みつける土方のこめかみに、ピキピキと青筋がこれでもかっ、というほど浮き上がる。 いいですかィ、考えてもみなせェ、とまるで聞き分けのない子供に言い聞かせるように、沖田がとうとうと語り始めた。 「仕事に失敗したら、こうやってガミガミ土方さんに怒られまさァねェ」 当然だ、と土方が頷く。 「だったら、うまくできたら誉められてもいいんじゃねェですかィ?」 「はァァァ!?」 怒りを通り越して呆れ返った声を出す土方に、沖田はまるで構わずに話を続ける。 「頑張った人にはご褒美、ってのァ日本古来の伝統じゃねェですかィ」 土方でなくても、何をムシのいいことを言ってるんだ、と感じるところだろうが沖田は気にしない。 「例えば戦国武将がいい例でさァ。しくじったら腹ァ切るか首斬られるかでも、手柄を立てりゃァ褒美がたんと貰えるじゃねェですかィ」 それが武士ってもんでしょう、と言われると土方がぐっと言葉に詰まる。 「……てめェ、散々ヒトにタカっておいて、その言い草か」 そうなのだ。成功しても失敗しても、大きな仕事の後には必ず土方は、携わった隊士たちを食事や飲み屋に連れて行っている。本来なら局長である近藤が負担すべき部分までも、副長が肩代わりしている形だ(近藤は給料の大半を女(お妙)に貢いでしまっているため、部下に奢る金などないのである) なのに、このうえ褒美を寄越せとはどういう了見だ。 「お前なあ… 俺だって、そうお前ェらと給料違わねェんだよ……」 むしろ残業手当がつかない管理職である分だけ給料は少ないと言ってもいい。 がっくりと疲れきった声でぼやく土方からは、すっかり怒りは消えうせてしまったようだ。なるほど、こういう作戦だったのか、と納得した隊士たちはまだまだ甘い。 「誰が薄給のアンタに奢れって言いやした」 「いつもタカってるヤツがなに言ってやがるーっ」 「あれは、タバコとマヨネーズしか金の使い道がねェ土方さんのために、俺が代わりに使ってやってるんでさァ」 「頼んでねェよ……」 屯所暮らしで仕事に忙殺されていて、ろくに趣味もなくて給料の使い道がないのは否定できないので、土方の反論にも力がこもらない。 「タカるんでなきゃなんだってんだ」 やれやれ、まだ分からないのか、とでも言いたげに沖田が肩を竦める。 「だから、労働で奉仕してくだせェって言ってるんですよ」 「あァァ!?」 今に始まったことではないが、沖田と話していると宇宙人と会話をしているような気分になる土方であった。何を言いたいのか、もうサッパリ理解できない。 「…察しの悪い土方さんにも分かりやすいように言いやすとね。要するに俺たちに顎でこき使われろってことですよ」 誰かもう、ほんとにコイツ殺してくれないかな、とでも言いたげな虚ろな目で土方が沖田を見る。もう言い返す気にもなれないらしい。 だが、沖田はそんな土方には全然お構いなしで話を続ける。 「普段俺らを酷使してる土方さんを(お前がいつ俺の言う事聞いたってんだよ!by土方)絶対服従にできるんですぜ? 想像しただけで爽快じゃァないですかィ」 この時点で、沖田が言わんとすることを正確に推測できていないのは土方ただ一人であった。他の隊士たちは、土方がどういう反応をするかと固唾を飲んで見つめている。 「…要するに、俺に厠掃除をさせたりパシリにしたりしてェって意味か……?」 あああ、やっぱり分かってないよ、この人。とドキドキしながら見守る。 「…まァ、ナニをしてもらうかは当事者次第ってことですかね」 「言っとくが、死ねとか副長の座を譲れとか、そういうのは聞けねェぞ」 日頃、何かといえば投げつけられている暴言を否定しておくのは、土方としては当然だ。 「分かってまさァ。その場限り後腐れなし、命令できるのは1回につき1つだけ、でどうですかィ?」 「……いいだろう。それで真面目に仕事するってェんなら乗ってやろうじゃねェか。そんかわし、サボったりつまんねェミスしやがったら、ただじゃおかねェぞ?」 絶対服従だの命令だの、敢えて不愉快な単語を使ってくる沖田に対し、挑発的な目をして頷いた土方に、隊士たちは声に出さずにどよめく。 「じゃ、商談成立ってことでいいですかィ? 武士に二言はねェですね?」 沖田がこんな風に言質を取ろうとしてくる時は要注意だ。何か魂胆があるに違いない、と警戒した土方は「ちょっと待て」と、話を切り上げようとする沖田を遮った。 「なんでェ。前言撤回するんですかィ。武士の風上にも置けねェや。切腹してくだせェ」 「んなコト言ってねェだろうがッ。ただ、条件をきっちり煮詰めときてェだけだ」 安易に同意すると、揚げ足取りの名人である沖田に後でどんな無理難題を吹っかけられるか知れたものではないことぐらい、長い付き合いの土方には分かっている。「チッ」と舌打ちしているのがその証拠だ。 そして整えた条件は 「ボクこんなに頑張ったですぅ」的な自己申告は認めない。といって土方の判断にも委ねない(全部却下されるのは目に見えているので)。客観的な公平性を期するため、上層部に功績が認められたようなケースに限ること。その際の一番の功労者に特典が与えられること。ただし、土方が最功労者の場合は該当者なしとすること。 などが決められた。 しかしこの段階で土方は彼らをナメていた。 これまでだって、呼び出されて叱責を受けることはしょっちゅうだったが、誉められることなど年に1回あるかどうかだったのだ。しかもそれは、大半が土方ががむしゃらに頑張った結果である。 いくら褒美をちらつかせたところで、そうそう手柄など立てられるものではないとタカをくくっていた。 ところが。 目の前にニンジンをぶら下げられた馬よりも猛烈な勢いで、隊士たちは仕事をし始めたのだ。 さすがに沖田は飄々としていたが、それでもこれ見よがしにサボることはなくなった。 唯一事情を知らない近藤は、突然働き者になった部下たちを不思議がりつつも大喜びしていたが、土方としては複雑な気持ちだ。 隊士たちが仕事に精を出してくれるのは喜ばしいが(彼らに触発されて近藤まで真面目に働くようになったのだからなおさらだ)その理由が土方への日頃の鬱憤を晴らしたいからだというのでは、手放しに喜べない。 嫌われてるのは自覚していたが、そこまで恨まれていたとは、正直ちょっとショックだ。 この勢いでは、本当に手柄をあげるのも時間の問題かもしれない、と危惧していたところに、その報せはやってきた。 長年真選組が追ってきた攘夷派グループの潜伏先を突き止めたというのである。 突入の陣頭指揮をとったのは土方だったが、一番の功労を認められたのは沖田だった。 ――そして土方は初めて、この裏ルールの真の目的を知ったのであった。 いや、他の隊士たちの目的は違うかもしれない(というか違うと思いたい)が、少なくとも沖田がどういうつもりであんなことを言い出したのかはよく分かった。 驚いたといえば心底驚いたし、抵抗もあったが、しかし沖田が言い出す無理難題としてはむしろそう困難な部類ではないようにも思われた。今さら沖田に見られて困る恥もない、と己に言い聞かせ、どちらにしても約束は約束だと関係を持ったのが2ヶ月前。 それから先月、そして今と、月イチのペースで沖田は手柄を立てている。 何故それだけの能力を素直に発揮できないのか、と思うと腹立たしくてならないが、そのうえ今回は沖田だけでなく山崎までが表彰されることになり、松平の前で仏頂面をさらしているというわけである。 土方の叱責を受けることがダントツで多い2人が手柄を立てたということは、すなわち日頃いかに彼らが土方を蔑ろにしているかの証明のような気がしてならない。やればできるくせに、土方に言われたぐらいでは能力を発揮する気にならなかった、ということなのだから。 そしてその不機嫌は、沖田と山崎が揃って副長室を訪れたことでピークに達した。 まさか、と思いたかった。 そんな悪趣味なのは沖田だけだと信じたかった。 だが、土方の儚い希望は、わざわざ非番の前夜を狙って副長室へとやって来た2人によって脆くも崩れ去ったのである。 「まずはこいつを着けてもらいやしょうか」 そう言って沖田が取り出したのは、鋲打ちされた赤い革の首枷だった。 それだけでもう、イヤ〜な顔をした土方へ沖田がにんまりと笑いかける。 「先週かぶき町に新しくペットショップが出来たんで、視察に行ったんですけどね。そしたらそこで、土方さんにすごい似合いそうな首輪を見つけまして、思わず買っちまったんですよ」 高かったんですぜィ、とニコニコ嬉しそうな沖田に、どの辺が似合いそうだというのか、問い質してやりたい反面、断じて聞きたくないとも思う。 沖田相手にぐだぐだとゴネたところで無駄だというのは分かりきっているが、それでもやはり山崎の存在は無視できない。 「おい、山崎…… 悪ィがてめェは、また後日あらためてってことにしてくんねェか?」 押し付けられた首輪を手に、途方に暮れたような表情で土方がチラリと山崎を見る。いつもの尊大さのカケラもなくて、山崎はもうこの表情を見られただけで満足だ、と思ったりもしたが、今回を逃せばこんなチャンス2度とないかもしれないのだから、ここはやはり土方が何と言おうと完遂させてもらうしかないと思い直す。 「何言ってんですかィ。2人まとめちまったほうが土方さんの手間が省けるだろうと、わざわざ予定を合わせてやったんですぜ。大体、今夜を逃したらアンタ次の非番いつになるか分かんねェじゃねェですかィ」 さも土方のため、みたいな口ぶりだが、本心じゃ土方がイヤがるから面白いとか思ってるに決まっている。 「さァさァ。いつまでもガキみてェに駄々こねてねェで、さっさと言うとおりにしなせェ。アンタと違って、俺らは明日も仕事なんですからねィ」 武士なら武士らしく、潔く肚ァ括りやがれ、と急き立てられ、渋々、本当〜に渋々、首枷を装着しようとした土方を沖田が止めた。 「アンタ馬鹿ですかィ。服の上から首輪つけるマヌケがどこにいんですか。ちゃんとシャツのボタン外して、首に直に巻くんですよ」 ただし、シャツもベストもボタンを外すだけで脱いじゃダメだと細かく指示を出され、もうヤケクソ気分の土方は反論する気にもなれず言われた通りに金具を留めた。 「ああ… 思ったとおりだ。すげェよく似合いまさァ。なあ、山崎。お前もそう思うだろィ?」 うっとりと魅入られたように見蕩れていた山崎は、急に同意を求められて慌ててこくこくと頷いた。 「アンタァ、色が白いですからねィ(お前のほうが白いだろうがっ!by土方) 白い肌と黒い髪と赤い革のコントラストが絶妙でさァ」 もっとも、と言って首枷からつながる鎖をぐいっと引っ張った。 「こんな首輪なんかより、真っ赤な血のほうがもっと似合うと思いますがね」 それはまた別に機会に、と笑う顔が冗談に思えなくて、表情には出さないものの土方は内心ゾッとする。 「…俺はこれで3度目ですからねィ。この先は山崎に譲るとしやしょうか」 一通り土方の首輪姿を堪能した沖田が、ふいに山崎を振り返った。 「えっ、あ、あの…… いいんですか……?」 2人にご褒美、と言いながら、もしかしたら沖田が土方にアレコレするのを指を咥えて見てるしかできないんじゃないかと(それはそれで美味しいが)予想していた山崎は、思いがけない提案におどおどと問い返した。 「なんでェ。大きなお世話だってェんなら……」 「ちちち、違います、違いますっ。あ、ありがたく譲らさせていただきますっ!」 これはもう、沖田の気が変わらないうちにっ、と。わたわたと隠し持っていたモノを土方の前へズズっと押し出した。 「ふふ、副長っ。あああ、あの、あの、こここ、これっ… これ、をっ、使ってくださいっ!」 これだけ口にするのに、ありったけの勇気を振り絞ったような山崎は、どうだ言ってやったぜっ、という顔をしつつもぜーぜーと息を切らせている。 だが当の土方は。 山崎が期待したような羞恥や困惑、あるいは憤怒といった表情ではなく、ただきょとんと「それ」を眺めていた。使え、と言われても「それ」が何なのか分からないのだ。 思いがけず発見した土方のウブな一面に喜びつつ、山崎が説明を付け加える。 「あの、それ、マッサージ器、なんすけど……」 と聞いて土方が連想したのは「肩凝り」 言われてみれば確かに、肩凝り用のマッサージ器に似ているかもしれない(よく知らないが) なんだ、要するに俺に肩揉みをしろと、そういうことか、と。焦らせやがってバカヤローが、と間違った方向に納得しかけた土方を、慌てて山崎が引き戻す。 「違うんです。その、マッサージっていっても、あの、前立腺用、でして……」 じっと見守る山崎の目の前で、徐々に単語の意味が土方の脳に浸透していくのが分かった。カァっと頬を上気させながらも、しかしいまだよく理解できていないらしい。 「えと、つまり、その、それ…を使って一人エッチ、をして見せて欲しいと、そういうことなんです、が……」 分かっていただけましたか、と上目遣いで確認してくる山崎に対し、土方の瞳が驚愕に見開かれる。 (って、そんな驚かなくても…… 2回だけとはいえ、沖田さんに調教されてんじゃないの、この人!?) 沖田の仕事がそんなに生温いとは思えない。どちらかといえば、それほどに土方が色事に疎い、というかあくまでノーマル嗜好ということなのだろう。 一応、山崎の希望は理解できたようだが、まだ土方から困惑が消えない。羞恥や抵抗もあるが、そもそも使い方が分からないのだ。 バイブレーターやディルドなら見たこともあるし使用方法もなんとなく想像できるが、こんな奇妙な形をしたもの、一体どう使うのか見当もつかない。 助けを求めるような、縋るような目で土方に見つめられる、という予想外の嬉しいオマケに狂喜しつつ、取り扱い方法を説明する。 「んと、こっちを前にしてですね。それで、コレをアナルに挿れるんです。これがスイッチですけど、すぐにONにしないで、少し馴染むまで待ったほうが気持ちイイ、らしいです、よ……」 さすがに山崎も自分で使ったことがあるわけでなし、その道の人に教えてもらった受け売りなので、語尾がだんだん自信なさげに小さくなっていく。 「あの、もちろん新品ですし、ちゃんと消毒もしてありますからっ。意外と柔らかい素材だからそんなに痛くないと思いますし、あの、ローションとかも用意してありますんでっ」 恐る恐るだったわりに、呆れるほど用意周到なのが山崎っぽい。お徳用の大ボトルのローションを差し出したあたり、実は今後も使う気まんまんなのではないかと疑われる。 しばらくそれらを交互に見やっていた土方は、つと視線を山崎に移した。 「てめー……」 「ハイ?」 なんだかすごく久しぶりに土方の声を聞いた気がする。 「ホントにそんなんが見てェのか……?」 そんなの、とはつまり土方の自慰姿、ということだろう。 何を言っているんだか。そんなの、見たいに決まってるじゃないか。もう、がっつり見たい。ごっつり見たい。ガンガンのゴンゴンに見たいに決まってる。 コクコクコク、と大きく何度も頷く山崎に対し、呆れ返ったような盛大な溜め息をついたかと思うと、土方はゆっくりとベルトを外しにかかった。 男同士には、マスをかきあって見せ合う、みたいな悪しき風習があるし、要するに後ろにこの得体の知れないモノを挿れて、適当にペニスを扱いて射精して見せれば満足するんだろう、と。土方はそうタカをくくったのだ。 上半身は、沖田のリクエスト通り前をはだけたシャツをベストを羽織ったまま真紅の首輪をつけ、下半身の衣類をすべて脱ぎ捨てる。 当然なのだろうが、土方のペニスは全く兆しておらず、山崎はちょっぴりガッカリした。 (ちぇ。ちょっとでも勃ってたら言葉で虐められたのになあ……) だが落胆したのはほんの一瞬。すぐに、あまりの扇情的な眺めに目が釘づけになる。 食い入るような目で見つめてくる山崎の視線を敢えて無視して、土方は指にローションをたっぷりと垂らして周辺のマッサージを始めた。 脚を広げ、自らの指でアナルを愛撫する土方の姿は、それだけで絶大な破壊力がある。 「んっ……」 つぷりと中指の先がめりこみ、甘い声を漏らした土方が軽く背をしならせる。 しばらくそうして指で解していたが、やがてもう大丈夫と判断したのか、土方はエネマを手に取った。未知の物体にやや怯みつつも、思ったより柔らかな感触に少し安堵する。 本体にもまたたっぷりとローションをつけると、ゆっくりとエネマをアナルに埋め込んでいく。 「くっ……」 恐れていたほど無理な感じはしないが、それでも圧迫感は拭えない。どうにか最後まで埋没させたものの、動かしたりする気には到底なれなかった。 しかし。 馴染むのをじっと待っている間に、じわじわと言い様のない快感がそこから広がってくるのに気づいてしまった。自分で動かさずとも、呼吸に合わせ収縮する筋肉がぴったり前立腺にフィットしたエネマを絶妙な感じで擦らせるのだ。 そのゆるゆるした刺激に我慢できず、モーターのスイッチを入れてしまう。 「はあっ!」 ほんの少し振動させただけなのに、思わず腰が跳ね上がってしまった。 「あ、あ……」 いやらしく下肢をくねらせる土方の痴態を、息をするのも忘れて山崎が見入る。 本当は。 せっかくのチャンスなのだから、土方本人に色々したりさせたりしてみたかったのだが。 沖田が見ている目の前で土方にどうこうできるほど、山崎は命知らずにはなれなかった(いや、たとえ沖田が一緒ではなくても、後で知られたら、と思うとやっぱり恐ろしくて直接はナニもできそうにない) これはこれでヨカッタと。すごいすごいヨカッタと。 もう一生、夜のオカズには困らないだろうと思えるほどに、土方の媚態はとてつもなく淫らで妖艶だった。 「あ、ん… ンアアッ……!」 少しずつ、目盛りを強くしていった土方は、ついに振動をMAXにしてしまうと、激しくペニスを扱きながらガクガクと腰を揺らしている。たぶん、今土方の頭の中は快楽でいっぱいで、山崎や沖田の存在など、きれいに抜け落ちているのだろう。 ぬちゃぬちゃといやらしく濡れた淫音が山崎の耳にまで届く。絶頂目前という感じだ。 その瞬間を決して見逃すまいと、瞬きも忘れて目を凝らす。 「アッ、アッ、アアアッ……!」 ほどなく。 大きく背中を反り返らせ、たまらなく甘い声をあげながら土方は果てた。 ドクドクドク、と白い粘液がシーツに飛び散る。 「ハァッ… ハァッ… ァッ……」 がっくりと仰向けに倒れこんだ土方だが、まだスイッチを切っていないために、休みなく刺激を送り続けるエネマのせいでヒクヒクと痙攣を繰り返している。 そのまま2回目に突入してしまいそうな土方に、気に入ってもらえたようで山崎としても嬉しい。この玩具はこのまま土方にプレゼントしてしまおう。夜になるたび、今頃副長はあのエネマでオナニーしてるかも、と想像しただけで興奮できそうだ。 山崎の期待通り、立て続けに3度絶頂を迎えた土方は、疲れ切った様子でようやくモーターのスイッチを切った(というか電池が切れた。さしもの準備万端な山崎も、換えの電池までは用意していなかったのだ) そこでやっと山崎たちの存在を思い出したようだったが、もはや焦ったり恥ずかしがったりするほどの余力も残っていないようだった。 けれども。 ドS王子の名を欲しいままにする沖田が、このままで済ませるわけがない。 「さて。それじゃ今度は俺の番ですかねィ」 さんざん繰り広げられた土方の痴態も、山崎に比べればはるかに冷静な目で観察していた沖田が、ゆっくりと土方に近づく。 「な、に、言ってんだ… お前は、もう……」 無駄と知りつつ、掠れた声で土方が抗議する。沖田の要望通り、首輪をつけただろうと言いたいらしい。 「何言ってんだは俺のセリフですぜ。そんなもんで俺のリクエストが終わりなわきゃァないでしょうが」 ごもっとも。 「いいですかィ。俺の今日の要求は『首輪をつけて四つんばいになった土方さんを後ろから犯しまくる』ですぜ?」 世にも恐ろしいセリフをさらりと明るく言ってのける沖田はまさしく悪魔王子。 「わかったら、さっさと四つんばいになってこっちにケツを向けなせェ」 鼻血をたらしながら、沖田と土方の嬌態を見学していた山崎は。 今後何があろうとも、決して沖田だけは怒らせるまいと、あらためて固く心に誓ったのであった。 |
| ◆END◆ 山崎はもっと変態ちっくにしたかった… |
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