借りすぎにご注意



イキが、あがる。
カラダが、熱い。
この程度で――と、悔しさに土方は唇を噛み締める。この程度、というよりはまだ何もされていないに等しい。
背後から緩く、銀時に抱きしめられているだけだ。
時折、項に軽く息を吐きかけられたり、脇腹をやんわり撫で上げられたり、太腿の外側に手のひらを這わされたりしているだけで。
自分が一糸まとわぬ姿なのに対し、銀時はいつもの洋服の上に重ねた着物すら脱いでいないというだけで、こんなにも焦らされ煽られてしまうのか。
「ヤるんならとっととヤれ!」
「てめーもさっさと脱げ!」
なんて言える性格だったらどんなに良かっただろう。
我ながら、何故こうも抵抗があるのかと不思議に思う。
そんなウブじゃないはずだ。単純に経験値だけなら銀時とそう違わないだろう。
銀時と肌を合わせるのだって初めてじゃない。初めてどころか互いに知り尽くしている(少なくとも土方は知られ尽くしている)間柄だ。
恥ずかしいなんて、意味がわからない。
わからないが、無性に羞恥心が煽られるのは事実で。
膝を立てて広げられた自分の脚の間に割り込んでいる銀時の膝をきつく掴み、強く唇を噛み締めて、早く次のステップに進んでくれるのをひたすら待つしかできなかった。
――こんな時の銀時が、あっさり土方の願いを叶えてくれるなど有り得ないとわかりきっていたけれど。

どこもかしこも綺麗で、触り心地が好い土方は、いくら見ていても触っていても、全然飽きるということがない。
もう、いくらだって銀時は撫で回して愛でていられる。
もちろん、もっとスゴイコトもあれこれしたくて堪らないし、触るだけじゃなくって吸ったり舐めたり咬んだりしゃぶったり、挿れたり出したり出させたり飲んだり、もうなんだってしまくりたい。
でも今日、特にして欲しいのは「おねだり」の気分なので。
土方が自分から欲しがってくれるまでは、いくらだって焦らせて啼かせて狂わせちゃうつもりなのだった。
どうせ無駄な抵抗なんだから、さっさと降参しちまえよ。
と思う反面、意地っ張りな土方が限界を超えてもなお我慢し続けるであろう痴態を想像しただけで、ドクドクと音をたてて血液が下半身に集中してくる銀時であった。

(チクショウ。なんだってコイツはこんなに余裕なんだっ)
腹立ちまぎれにますます強く銀時の膝を握り締めるが、むしろなんでこんなに切羽詰っているのか自分に問いたい。
確かにさっきよりは銀時の接触は進んでいる。
といっても、舌の先で耳の後ろをつつかれたり、指先が乳首を掠めたり、脚の付け根を押されたりしてるぐらいだ。
それがあまりに焦れったくて、銀時の膝に掴まっていなければ自分で股間に手をのばしそうになってしまう。
それだけは。
それだけは絶対にやってはいけない。
銀時の腕の中で、銀時の手を待ちきれなくて自分で慰めてしまうなんて。
そんな醜態を晒すぐらいなら、拳を握り潰してでもこの責め苦に耐えきってみせる。

(んっとに強情だよなァ。なんで素直に「シテ」って言えないかね?)
呆れる、というよりはむしろ、そんなところが可愛くてたまらないわけだが。
さっきから何度も、ふっと力が緩まっては手が股間にのびそうになっているのに気づいている。
そしてその度に、白い指先がなおいっそう白くなるほどぎゅっと銀時の膝にしがみついているのも。
まさか銀時の膝を砕いてやろうとか思ってるんじゃないだろうな、と疑いたくなるほど力がこもっていた。
どうするかなー、と銀時は考える。
もっと激しく、土方の感じるところを責めまくって喘がせてよがらせて、でもイかせてやらなければ、陥落させるのは簡単なのだが。
それじゃあいつもやってることなので、今日は直接的なことは何もせず、でも追いつめて屈服させたい。
(んー。言葉責めかァ?けど、それもよくやってっしなァ)
直接的な愛撫と同等に、土方はいやらしい言葉にも弱いのだ。本当に成人男性か?と疑問に感じるほどに。
もっとも、ネチネチと女性を言葉でいたぶる土方なんてまったくもって想像できないので、たぶん彼のセックス観にそんな要素はないのだろう。
そしてふと、力を入れすぎて小刻みに震えている白い手を見て思いついたことを口にしてみる。
「……貸してやろうか?」
耳許で囁けば、びくりと背中がすくむ。
当然、こんな唐突な申し出が土方に伝わらないのは承知のうえだ。今の反応だって、単に熱を帯びた声音と吐息の感触に身体が勝手に反応しただけだろう。
「俺の右手、貸してやるっつーの」
だから分かりやすく付け足してあげた。

だが、暴走しそうな身体から気をそらすので精一杯な意識に、銀時の言葉はなかなか浸透しない。
遠慮すんなよ、ホラ、と半ば勃ち上がりかけた性器に触れないけれど熱は伝わるほどの距離まで右手を近づけられて、初めて銀時の言わんとすることが理解できた。
と同時に、全身が羞恥で真っ赤に染まる。
つまり銀時は、彼の右手を使って土方自身を昂らせろと言っているのだ。
そんなの自慰と何も変わらないではないか――!
そう思うのに。
感情は激しく拒否しているのに。
「いらねェの?ずっとこのまんまでいいってか?」
意味ありげに指を動かして見せつけながらも、決して触れてこようとしない銀時にとうとう土方の意地が折れた。
震える手を手の甲に重ね、銀時の右手ごと性器を握りしめる。
「ンっ……!」
待ち焦がれた感覚に、細い喉が仰け反った。
それからはもう、夢中で上下に扱き上げる。
けれど足りなくて。それだけでは全然足りなくて。
土方は銀時の左手に指をのばした。

「なに?追加融資?いいけど、銀さんの左手は高いよ?」
あとでたっぷり利子つけて返してもらうよ?
からかうように言っても、聞こえているのかいないのか。
もどかしげに導かれた先は後庭だったりしたものだから、これには銀時もちょっとビックリだった。
(って、マジで限界だったんだ)
まさかこんな風に挿入をねだられるとは予想してなかったので嬉しくなってくる。
早く早く、と急かす仕草なのを敢えてはぐらかすように周辺をやわやわ撫で擦れば、堪えきれず誘うように腰が揺れた。
(なにコイツーっ。エロすぎじゃねぇのォォォ)
もっともっと焦らしてやりたかったのに、銀時のほうが先に限界を越えてしまいそうだ。
「挿れて、欲しい……?」
耳たぶを唇で挟んで吐息だけで尋ねたら、目元に涙を溜めてカクカクと頷いた。
「何を……?」
答えるかわりに、銀時の左手首を掴んで後ろの蕾に押し当てようとする。だがまるで力が入らないらしく、銀時はわざとらしく分からないふりをする。
「なァ、何を挿れて欲しいんだよ……?」
「……びっ」
滅多に聞けない、土方の声に出してのおねだり。
「ん?なに?」
だから、貴重なものは可能な限り引き伸ばして愉しみたい。
「……ゅ、びっ。ゆび……っ」
「指?挿れるだけでいいのか?」
「ちが、ァっ……」
喋るのも辛そうな土方の様子に、我ながら意地が悪いと思う。が、こんなに可愛いんだから仕方ないだろう、と開き直る。
「ゅび、いれて……かき、まわし、て、ほしっ……」
うわーうわーうわー!!!
(は、鼻血吹きそっ……!土方ァァァ、俺を殺す気かァァァ!!!)
きっとそれは土方のほうこそ言いたいセリフだと思うが。
銀時としては、そこでいきなり猛り勃った凶器をブチ込まなかったのを誉めて欲しいぐらいだった。
(ろ、録音しとけば良かったっ!てか、次からビデオ録っとくか!?)
とにかくもう、ここまで言われて挿れなかったら男として、というかヒトとして失格だ。リクエストにお応えして、ガンッガン挿れてグッチャングッチャンに掻き回してやろうじゃないの。

啼きながら、もうやめてくれ、って哀願するまで。
指以上のモンを挿れてくれ、って腰を振って求めるまで。
銀時の指は、手は、しばし土方に貸し与えよう。

(……んで。このレンタル料はどうやって払ってもらおっかな〜)
取り立て時のことを考えると楽しくてたまらない銀時なのであった。


◆END◆

ご利用は計画的に


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