スロータイム |
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まったく、人間の欲というものには際限がないのだと、呆れるやら感心するやら。 科学技術とは、人間の欲望を叶えるために存在するのだとしみじみ痛感する。 その情熱をもっと別のことに傾ければいいのに、とどうでもいいことに限って血道をあげる自分を棚に上げて銀時は呆れた。 その視線の先にあるのは白い錠剤が並んだシートが数枚。もちろん風邪をひいたとか、怪我をしたので鎮痛剤、とかではない。 例によって坂本から宇宙便で送られてきた怪しげなものだ。 『金時くん 誕生日おめでとう』 のメッセージカードを添えて、わざわざ10月25日の配達指定で。どういう脳ミソをしていたらきっちり半月ズレて記憶できるんだと不思議でならない。 「ったくバカ本のヤローめ。いつまで経っても人の名前も誕生日も覚えやがらねェ」 ボヤいてはみるものの、名前はともかく誕生日を正しく覚えられていたとしたら、ヤロー同士でそれはそれで気持ち悪い。 大体オッサンに片足つっこんだような年齢で今さら誕生日なんて、めでたくもなんともない。半月前の本当の誕生日も、かろうじて新八と神楽が祝ってるんだかバカにしてるんだかギリギリ、というラインのゴミ一歩手前なプレゼントをくれただけだ(あとケーキは食べた。が別に誕生日じゃなくてもケーキは食べるので、あまり関係はない) なので、坂本の祝ってくれようという気持ちだけで有り難い――わけは当然なく。 「っとにアイツは、どーゆー商売してやがんだ」 毎度毎度ロクでもない物を送りつけてくるのは、もしかして銀時を人体実験台とでも考えてるせいじゃないだろうかと疑いたくなる。 今回の「コレ」にしたって、一体こんなものを銀時にどうしろというのだ。 ――そう思いながら、好奇心と暇つぶしで試してみた結果、冒頭の感想に至ったのである。 スゴかった。 くだらない、と見くびっていたがなかなかどうして、侮れない。 ちょっともったいなかったかも、とすら思ってしまった。 今日は後で土方が来るから、ガッつきすぎないよう、存分にヒィヒィ啼かせられるよう、前もって軽く出しとくか、程度のつもりだったのに。 なんだこれは。こんな強烈だとは予想だにしていなかった。 発想自体も大したものだが、さらにそれを実現させてしまうパワーには感服する。こんなモノ使い道ないじゃないかなどと見くびった自分はまだまだ甘かった。 こんなスゴイモノ、土方に試さないでどうする。 最近怪しげな薬物関係には警戒するようになった土方だが(もちろん、銀時があれこれ使用したせいである)脇の甘い土方のことだ。話のもっていき方次第で、簡単に乗ってくるだろう。 あらためて注意書きをじっくり読み直した銀時は、包み紙やら坂本からのカードやら一式を無造作にテーブルの上に散らかすと、土方の来訪を待つ間ひと眠りすることにした。 夜も更けて、フラリと土方が万事屋へやって来た。一週間ぶりの逢瀬だ。 仕事が立て込んでて遅れてきたりドタキャンしたりが珍しくないのに、予定よりやや早めの訪問なのは、土方も待ち遠しかったということだろうか。 「おう、早かったな」 笑顔で迎え入れ、勝手知ったる足取りで土方はソファへ、銀時は酒を取りに台所へ向かった。 ガチャガチャとコップやら皿がぶつかる音を聞きながら、手持ち無沙汰な土方はテーブルの上に手を伸ばす。 「……んだ、てめー。今日誕生日なのか」 聞こうかどうしようかすごい迷ったが、見てしまった以上無視しても後からネチネチ面倒そうだし、興味ないけどしょーがない、みたいな表情でどうでもよさそうな口調で、ビールとつまみを持って戻ってきた銀時に、バースデーカードをひらひら振りながら土方が尋ねた。 「んあ? ああ、それか。いやもう、コイツどーしよーもないバカでよォ。何回言っても人の名前とか誕生日とか全然覚えやがらねんだよ」 「なんだ……」 てっきり誕生日だから、と無理難題をふっかけてくるための前フリで、わざとらしく他の人間からのカードを置いてるのかと思った土方は、やや拍子抜けする。 「なに。祝ってくれようとした?」 「別に……」 祝わされるかと思っただけだ、とは墓穴っぽいので言わないでおいた。 「だよなァ。お互い、もう誕生日がめでてェって歳じゃねェもんなァ」 「そう、だな……?」 何かおかしい。こんな真っ当なことを言う男じゃないはずだ。土方の中でけたたましく警戒音が鳴り響く。 「あー、けど、めでてェかどーかはともかくよォ、ソイツは結構効いたぜ。なんだったら、お前にやろーか?」 ソイツ、とは土方が今左手に持っている錠剤のシートのことだろう。よく見れば確かに一錠無くなっている。 「別にいらねェ……」 断りながら、効果ってなんだ、と注意書きをあらためて読んでみる。 製品名<SLOW TIME> 効能<体感的時間感覚が大変ゆっくりになり、その後一気に押し寄せます> 説明を読んだところで、何がなんだかサッパリだ。いかがわしい、ということだけは十分伝わったが。 「お前らンとこってアレだろ? どーせゴーモンとか自白剤とかやってんだろ? だったらソイツも併用してみろよ。効果バツグンだぜ?」 仕事に使える、と聞いて多少興味がわいたものの、まだまだ不信感のほうが勝っている。 「ンなモン、どう使えるってんだ」 体感時間が間延びすると言われても、意味が分からない。もしかして1時間分仕事をしたのに、実際には10分しか経ってないとか、そういうことだろうか。だったら確かに重宝だ。 「例えばよ、お前らが捕まえたテロリストがいたとするだろ。んで、真選組としちゃあ連中のアジトだとか仲間だとか裏の繋がりだとか、吐かせたいことが山ほどあるわけだ。そこで、ゴーモンしたり自白剤を飲ませたりする」 「……」 公に認めることはできないが、実際その通りなので土方は否定も肯定もしない。 「けど、ゴーモンっつーのはする側も疲れっし、例えばてめーみてェに根性据わってるヤローにゃ無駄骨だし、自白剤なんてモンも耐性のあるヤツにゃ大して効かねェ」 「……そうだな」 土方自身、どんな拷問にも自白剤にも屈さぬ自信があるので、銀時の意見には同意せざるをえない。 「ま、そーゆーヤツにコレを使ったとこで、ゲロさせられるってモンでもねェだろーけどよ。無駄な労力は使わなくて済むかもしんねェぜ?」 「コレで、か……?」 銀時が力説すればするほど疑わしさは増すばかりだ。 「おう。ここに物理的速度が大幅に落ちるって書いてあんだろ? それって例えば、のんびり間を空けて10発殴っても、効果が切れた瞬間10発分まとめてダメージがくるって意味らしいぜ。それなりに鍛えてるヤツでも、案外堪えそうだろうが」 「10発は10発だろ」 1発殴ったら10発分のダメージを与えるというならともかく、トータルダメージが同じなら意味がない、と土方は切り捨てる。 「って思うだろ? それがそーじゃねェんだわ、これが」 「……」 熱弁する銀時を白ーい目で土方が見やる。何をそんなにムキになっているんだか、と言いたげだ。 「じゃあ、試してみっか?」 「あァ?」 「俺の言ってることがホントかどーか、自分で確かめろよ。んで、納得できたら使えばいーじゃん」 一見もっともらしいことを言ってるようにも聞こえるが、そうあっさり頷く土方ではない。 「なんで俺がオメーに殴られなきゃなんねーんだ」 話の流れからいってそう解釈するのは当然だろう。まだ銀時の真意には気づいていないようだ。悟られないよう、わざとそっけない素振りで仕事に的を絞って話しているせいもあるが、ことソッチ方面に関してはあまり土方は学習能力がない気がする。 「誰が殴るかよ。もっと違う使い道もあんだろーが。…別にこんなモンどってことねェって思ってんなら飲めんだろ?」 だから、効き目なんてないと思ってるから飲む必要性も感じないんだ、と言いたかったが、頑なに拒否するのもビビってるように思われそうで不愉快だ。 ――と考えてしまった時点で、銀時の策略に乗せられていたわけである。 そしてまんまと罠に嵌まり薬を飲んでしまった土方は、着流しを剥ぎ取られ全裸で布団に転がされたのであった。 「ヘンな感じだろ? 見えるし聞こえるし考えられるのに、神経だけがミョーに間延びしてる感じで」 銀時の問いかけは理解できるのに、答えようとしても口が上手く動かせない。本当に不思議な感じだ。喩えるなら、夢の中のボンヤリした感覚に似ているかもしれない。 躯の上を這い回っている銀時の手のひらの感触も、他人事のように遠い。 ネチネチと触られていながら何も感じないのに戸惑いを浮かべる土方を、愉しそうに銀時が見下ろす。 いつものように敏感な躯がビクビクと跳ね回らないのはちょっと残念だが、後のことを想像すれば自然と愛撫にも熱がこもるというもの。 まだ兆しを見せていない花芯や後孔にローションをたっぷりと塗りつけてきゅむきゅむと扱いては鈴口に爪を立て、こりこりと前立腺を引っかく。 「ん……」 躯が覚えこんでいる刺激とあまりに違いすぎてもどかしいのだろう。悩ましげな溜め息が零れる。強い快楽を求めて腰を振ろうにも、薬の効いた躯は思うように動かない。 もちろん他の感じる場所、乳首やら鎖骨、臍の周りやら腰骨、内腿にふくらはぎから足の指まで、全身くまなく舐めて吸ってしゃぶって齧りまくる。 一錠で効き目は5分間。まあとりあえず最初はこんなもんだろうと、時間内めいっぱい悩ましくも無防備な肢体をひたすら弄りたおした。 「ぅ……」 ビクン、と土方の躯が小さく跳ねた。薬が切れる合図だ。 銀時は急いで土方の上から退くと、その痴態をわずかでも見逃すまいと瞬きもせずじっと目を凝らす。 「ぁっ…!ぁっ…!ぁ、ぁっ…!」 蓄積されていた快感が一気に押し寄せ、強烈過ぎる絶頂に襲われた土方は、声すら出せないようで目を見開き全身をただガクガクと激しくのたうたせながら、いつ止まるとも知れないほど長い長い放精を続けた。 濃厚な愛撫に慣れきった躯は、普段なら5分程度の前戯では射精に至らない。 だが、一気に爆発した快感は一瞬で土方を頂点まで押し上げたようだ。 フラッシュバックする快感で強制的に何度も立て続けに達かされる、まさに絶頂地獄を味わっているところだろう。 長い吐精を終えても、まだヒクヒクと痙攣を繰り返す土方の瞳を覗き込めば、しっとりと潤みながらも強い光で睨み返された。どうやら正気を保てているようだと判断し、銀時はゆっくりと話しかけた。 「どーよ。結構キいたろ?」 返事はなく、ただハアハアと荒い呼吸だけが繰り返される。 「今はお試しってことでイカせてやったけどよ。もしクスリが切れた時に根元縛られててイケなかったらどうする? んで、あと2錠ぐらい飲まされてもう10分、しかも今度は指なんかじゃなくて俺のアームストロング砲を奥まで突っ込まれてグチャグチャに掻き回されるとしたら? ああ、それかイッてる最中にクスリ飲まされて5分間イキっぱなし、とかな」 微かに、だが明らかに黒い瞳に怯えが宿る。 「なんでもするから、それだけはやめてくれ、って気にならねェか?」 言ってる銀時ですら結構ゾッとするのに、それでも頷かない土方の意地っ張りぶりは賞賛に値する。が、だからいじめたくなるのだと分かっているのだろうか。 「ふーん。相手が俺じゃ危機感ねェってか? んじゃ、攘夷浪士の連中だったらどーよ。雑魚どもに寄ってたかってマワされて嬲られて、イカせて欲しかったら言うこときけ、って脅されたらどうする」 「絶対に、屈さ、ねェ」 この状況で即答とは、本当に筋金入りの強情さである。 「オイオイオイ、耐えられるつもりですかァ? ……それとも、あれか。実は期待してるとか?」 トーンを落とし耳元で囁くように煽れば、ヒクンと躯が波打った。 「うっわー。土方クンてばほんとにインラン〜。チンピラに陵辱願望とかあるんだ〜」 「んっなワケある、かッ…!」 まあ、認められないだろうが。 「ウソだね。その証拠に、ホレ。勃ってきてるぜ?」 言葉に煽られたのか、妄想に犯されたのか、あれほどぐったりしていたはずの土方の花芯が再び微かに頭をもたげかけていた。 気の毒な体質だなあ、と銀時は愉しくてたまらなくなる。 「そんじゃま、そんなエッチな土方クンのために、銀さんが特別にお手伝いをしてあげるとしますか。快楽拷問に耐性をつける特訓、付き合ってやるよ」 イケないコースとイキっぱなしコース、まずはどっちからいく? と。 ニタリと唇を歪めた銀時の親指と人差し指の間には、新たな2錠が挟まれていた。 |
| ◆END◆ イメージはノ○ノ○ビーム |
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