拍手はWパロ作品となっております。
元ネタはパンサー鈴木氏の【騎士は午前0時に現れる】
Wパロが苦手・許せない、というかたはこの先に進まれないようお願いします
午前零時の訪問者 1 |
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「オイ、土方」 後ろの席の高杉が、足を伸ばしてガツンと椅子を蹴った。 失礼極まりない態度に、普通だったら無視するか怒鳴り飛ばすところなのだが、高杉のほうから声をかけてくるなど滅多にないことだったので、怒りをぐっと堪えて「なんだ」と土方は振り返った。 「お前、今日ウチに帰るな」 「はァ!?」 たまに口を開いたと思えば訳のわからないことを言うのは珍しくもなかったが、それにしても今日は一際意味不明だ。 「何言ってんだ、てめェ」 「いいから今日はウチ帰んな。もし行くとこがねーっつんなら俺ンとこ来てもいいからよ」 俺ァ今夜出かけてていねェから気兼ねいらねェぜ、と付け加えられてますます訳が分からない。家主が留守の家に客を呼んでどうするのだ。 ――正直、高杉の自宅、というのにいたく興味は引かれたが。 「んなコト急に言われたって、無理に決まってんだろーが」 「なんでだよ。バージンの小娘じゃあるまいし、ヤローが一泊や二泊外泊したからって構わねェだろーが」 バージン、という単語に土方の頬がうっすらと染まる。それにしても、謎に包まれた高杉のプライベートの一端が垣間見えるような発言だった。 「生憎、ウチは門限キビシイんだよ。娘に悪影響与えるな、ってな」 幼い頃、事故で両親を失くした土方は、遠縁でこの学園の教頭でもある松平片栗虎に引き取られた。彼には、目に入れても痛くないほど溺愛している一人娘がおり、彼女に手を出したらただじゃおかないだの、悪い遊びを教えるなだの、それはもう煩く言われている。 だから、学校行事以外の外泊などもってのほかなのだ。 土方に言わせれば、自分などよりよほど、まるでマフィアかヤクザかといった松平本人のほうが悪い影響を与えそうだと思うのだが。 そのあたりの事情を薄々知っているのだろう。高杉はチッと舌打ちしたが、それ以上は無理強いしなかった。 その代わり 「しょーがねェ。けど、これだけは守れよ。今夜は絶対に部屋から出るな。日付が変わる前にとっとと寝て、何があっても何を見ても何を聞いても、絶対に部屋から一歩も出るんじゃねェぞ」 「…なんでてめェにそんなこと指図されなきゃなんねェんだよ」 冗談で言っているわけではなさそうだが、理由も告げずにそんなことを言われても、はいそうですかと従う気にはなれない。元々他人にあれこれ言われるのは嫌いなのだ。 「それがお前のためだからだ。後悔したくなかったら、言う通りにしとけ」 「……覚えてたらな」 言われるまでもなく、土方は夕食後は滅多に部屋から出ないのだが(うっかりパジャマ姿の栗子に会ったりしようものなら、松平が怒り狂うからである) 素直に頷くのも癪に障ったのでそう答えた。 「覚えとけ。後悔すんぞ」 それだけ言うと、あとは振り返りもせず高杉は教室を出て行った。 その夜。 部活で汗と共に高杉の忠告をすっぱり流してしまった土方だったが、ハードな稽古で疲れきっていたし特にすることもなかったので、11時には寝る態勢を整えていた。 寝入ってどれほど経った頃だろうか。ふと土方は目を覚ました。 しばらくぼんやりと暗闇の中空を見つめ、何故目覚めたのか思い巡らす。 元々あまり眠りが深いほうではないが、なんとなく、いつもの覚醒とは違う感じがしたのだ。 (なんだ……?) すぐにその理由が分かった。庭に人の気配がする。それも複数の。 (泥棒……?) 夜中に他人の家の庭に侵入する輩など他に思い当たらない。だが、それにしては人数が多すぎるような気がする。 こんな一般家庭に強盗団というのも考えにくいが―― いずれにせよ、招かれざる客には違いない。 ベッドから降り、ブラインドの隙間から外をの様子を窺ったが、すでに人影はない。出て行ったのならいいが、もし家の中に入ってきていたら。 竹刀を掴むと、足音を立てずに土方はそっと部屋を出た。 土方の部屋は一階の一番奥、庭に面した場所にある。隣が松平の寝室で、一人娘栗子は2階の土方とは反対側の端の部屋だ。要するに、土方が夜這いをかけるのを断固許さないぞ、という部屋割りなわけだが、別にこんなことをされなくたって、土方にそんな気は毛頭ない。幼い頃から一緒に育ってきて、妹としてしか見られないのだから。 むしろ危険なのは栗子のほうで、れっきとした彼氏がいながら(松平は「あんなチャラ男絶対に認めん!」と言い張っているが)時折意味ありげな目で土方を見ている。 もっとも、だからこそ松平が警戒しているのかもしれないが。 しかし、そんな風にまるでバイ菌のごとく扱ってるように見えるが、土方が疎まれているなんてことは全くない。 むしろ暑苦しいくらいに懐かれてるといってもいい。 「娘にゃこんな話できねェもんなァ」と言いながら土方の部屋に押しかけては、一方的に下品なワイ談を喋り倒していったり。 「まァちょっと付き合え」と酒瓶片手に乱入したり。 教え子であり息子同然の未成年に飲酒を勧めるとは、教育者としてどうなんだ、という気が激しくするが、喫煙を見逃してくれるのは有り難い(ただし、くれぐれも栗子の前では控えろと煩く念を押される) そんな、ちょっと傍迷惑だけど愛すべき家族を守るのは自分の役目だと常日頃から土方は思っていた。 |
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