魔法の言葉 3 |
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古来より言霊師を生業とする一族に生まれた金時と銀時であるが。 双子だったためなのか、一人で言霊を使うことができなかった。2人で同時に言霊を唱えないと効力が出ないのだ。 それゆえ幼い頃から、一族の者たちには「出来そこない」呼ばわりをされ、ずっと半人前扱いをされてきた。 同じ一族の血を引くとはいえ、能力を持たない者のほうが圧倒的に多い。そんな者たちの長年にわたって溜まりまくっていた僻みや妬みが、力の弱い金時たちに向けて一斉に吹き出したのだ。 力がないとはいえ、叩きつけられる呪詛の言葉はそれなりに重く、当人も自分たちは半端者だと思い込み、投げやりな気持ちのまま高校入学を迎えた日。 一族の掟に従い、言霊師として仕事を請け負うことになった金時たちに、紙様が与えられることになった。 本来であれば、一人の言霊師に対して紙様は一体以上がつけられる。術師としての能力が強ければ強いほど、紙様も多く必要となる。 だが、二人でやっと一人前の金時たちには、土方一人しか与えられなかった。 初顔合わせのその日 「お前もついてねェな。俺ら2人の紙様なんてよォ」 卑下するように言った銀時と、続けて金時の頭を土方はスパン、スパンッと思いっ切り張り倒した。 「デカイ図体して、何拗ねてやがんだ。2人で一人前だろうが何だろうが、この俺を持てるってのはスゴイことなんだぞ。もっと感謝しやがれ!」 そう勢いよく叱り飛ばしてくれた後 「それに2人とも、言霊師にもちょっといないぐらい、いい声してるじゃねェか。俺はお前らの紙になれたことを誇りに思うぞ? だからもっと、俺が自慢したくなるぐらいイイ男になってみせろよ」 と言ってにっこり笑った顔の可愛かったことといったら! 「「…っ、ひじかた〜〜〜」」 「んだよ、泣くなよ、男だろ」 しがみついてくる2人の頭をポンポンと軽く叩いて宥めてくれる。 あの時の、魂の底まで温めるような笑顔と優しい手のひらを、金時も銀時も決して忘れない。 土方が誇れるような男に。土方に相応しい男に。 そのために特別何か努力をしたというわけではないけれど、土方の目をまっすぐ見られないような真似だけは決してするまいと生きてきた。 大学を卒業して、言霊師の傍ら何か副業をと思い、土方がイイ声だと誉めてくれたので、それを活かそうとホストになった。金時たちが耳元でちょっと甘い言葉を囁けば、どんな女も男もたちまち落ちる。 そうして、双子の新宿ナンバー1,2のホストとして話題になり、最近ではテレビなどにも出るようになった。 だが、あの日からずっと、彼らの心は土方のものだ。 出会った時には同い年のように見えた土方はあの頃のまま、少しも変わらない。いや、可愛さとエロさは増すばかりだが、金時と銀時がすっかり成人してしまっても、いつまでも少年特有の危うい色香を放っていた。 紙は食事を摂らないし、歳もとらないのだ。 だが、放っておけば劣化はする。元々、日々の損傷が激しいのだから。 だから、年に一度の紙様定期メンテナンスは必須行事なのであった。 そして今年も、メンテのシーズンがやってきた。 金時と銀時は、大事な大事な土方の健康を維持するため、人形師であるお登勢の元を訪れた。人形師とは、いってみれば土方の生みの親。お母さんのようなものだ。いや、お祖母さんか――? 人形師詣でには、豪勢な手土産が欠かせない。 メンテナンスに手を抜かれては困るし、余計な改造を施されてはもっと困るからだ。せっかくの可愛いピンク色の乳首を黒っぽくされたりしたら泣く。 「久しぶりだね。双子天パに可愛がられてるかい?」 お登勢が状態を検分するように、土方の顎を持ち上げあちこち角度を変えてはじっくりと視認する。 「ますます馬鹿んなってウンザリだ。俺よりコイツらのほうこそメンテするべきじゃねェのか」 目を閉じてされるがままになっている土方が、本当に心底呆れているような声を出した。 「なんてこと言うんだ、土方っ!」 「そういう可愛くないこと言ってると、後で啼かすぞ」 ぎゃあぎゃあと一通り騒いでから、兄弟はあらためてお登勢に向き直った。居ずまいを正し、きっちりと頭を下げる。 「というわけで、バァさん。土方のメンテナンス、よろしくお願いします!」 お登勢の前にどん、と賄賂もとい貢物を差し出す。ありったけのツテを駆使して取り寄せた幻の高級日本酒。現地直送取れたて新鮮ピチピチの魚介類。極上正絹の反物と精巧な細工の簪。 「おやおや。何でもリクエスト聞きたくなっちまうねぇ」 好みを知り尽くした上納品の数々に、お登勢が相好を崩した。 「あ、じゃあチクビとアナルをもっとピンクで」 「今の倍くらい感度良くしてくれてもオッケーっす」 それから、それから…と指折り希望を並べ立てようとする双子の間に、土方が割って入る。 「冗談じゃねェッ。えぇと、コイツらよりでっかくてゴツくてムキムキマッチョで、あと立派な顎鬚なんか生やしてくれ」 「それこそ冗談じゃねェッ!」 「現状維持で頼んます!」 どんな土方だって愛してるけど、でもやっぱりそんな土方はいやだ。 「…やれやれ。相変わらず馬鹿だね、お前さんたちは。……さ、おいで十四郎」 放っておくと延々と続きそうな遣り取りを肩を竦めて打ち切ると、お登勢は土方を伴って奥座敷へと消えていった。 |
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お登勢さんに「十四郎」とか呼ばれるとなんか萌え |
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