大人への階段 2



(とうしろうクンのお兄さんかなんかか?とういちろうクンとか?)
メールの文面からはあまり、兄弟がいるようには見受けられなかったが。
「あー、すんません。俺、万事屋銀ちゃんの坂田ってモンなんすけど、とうしろうくんから依頼のメールもらいまして。…ここ、ひじかたさんのお宅っすよね?」
話しかけながら、印刷してきたメールを少年に手渡した。眉間に深々と皺を寄せた少年が、汚いものでも見るかのようにメールに目を走らせる。
「……んだよ、これ」
「いや、何って言われても見たまんまなんだけど」
「土方十四郎は俺だけど、俺はこんなメール出した覚えはないぞ」
「えっ、キミがとうしろうくん!?」
十四郎くんとか言うな、と顔をしかめた少年は怒っているようだ。
「あー、じゃあイタズラメールかあ。よくあんだよねー。うん、でもイタズラなら良かった。いきなり邪魔して悪かったな」
「……待てよ」
踵を返そうとした銀時を、何故か土方が引き止めた。
「それ……」
銀時が持っている風呂敷包みを指さす。
「このメールの差出人のために持ってきたのか?」
「ああ、うん…… 小さい子供かと思ったもんだからさ」
風呂敷からはみ出ている怪獣の足とかミニカーの一部を目ざとく見つけたらしい。
「お人好しだな、アンタ」
「いやあ、そーゆーわけでもないんだけどね」
おさまりの悪い天然パーマをがしがしと銀時が掻き混ぜる。
「…俺は出してねェけど、このメアドは確かに俺のだ。たぶんツレが勝手に俺の名前使ってアンタんトコにメールしたんだと思う」
差出人の部分に記載されているのは紛れもなく土方の携帯アドレスで、送信時間は1時間ほど前。下校途中で「土方さん。ケータイ落としやしたぜ」と言って携帯電話を差し出してきた沖田総悟の顔を思い出す。
たぶんきっと間違いなく、総悟が勝手に土方のポケットから抜き取りイタズラメールを送ったのだろう。
(ったく…俺だけならまだしも、全然関係ない他人にまで迷惑かけるなっつーんだよ)
「なんだ、そんな悪戯するぐらい気の置けないトモダチいるんじゃん」
「あ、ああ、まあな……」
ニカッと嬉しそうに笑われて、なんだかこそばゆい。
わざわざ無駄足を踏ませてしまった罪悪感がチクリと胸を刺す。
「……時間あるなら茶ぐらい飲んでいかねェか?」
「いやいや、ダチのやらかしたことだからってキミが責任感じなくてもいいから」
別にそういうつもりじゃ――とかなんとか、土方が口の中でもごもご言っている。
最初の印象から一変した雰囲気に、銀時ももう少し彼と話がしてみたくなった。
「……糖分ある?」
「は?」
唐突に意味不明な質問をされて、きょとんと眼を見開いた土方の顔がなんだか可愛い。
「いや、だからお茶請けに甘いモンはあるのかなー、って」
「……アンタ甘党かよ」
「あっ、なに呆れてるんだよ。糖分ってのはなァ、とーっても大事なんだぞ!」
力説しはじめた銀時を、ますます土方が白い目で眺める。
「…も、わかったよ。貰いモンのクッキーかなんかでよけりゃ出してやるから」
「うお、マジ?やたっ。とーしろーくん、ありがとー!」
「だから十四郎くん言うなっ」
ウキウキと土方の後に続いて玄関をくぐりながら、銀時は返してもらった用紙を折りたたんでポケットに仕舞った。
ただ一行

『ともだちになりたい     ひじかたとうしろう』

とだけ書かれたメールを。



年齢差があれば、銀土といえどもあんまり意地を張り合わない、かな?
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