大人への階段 蛇足



あれほど大人しくしてろと言ったのに。
何度もやめてくれと懇願し、逃れようと足掻くものだから、土方の両手首はベッドヘッドのパイプへと包帯で縛りつけられてしまった。
無体な仕打ちに、ますます土方の躯が竦みあがる。
一応シャツは完全には脱がさず手首のあたりでまるまったまま、袖の上から縛っているのでそれほど痛くもないし痕も残らないはずなのだが。
「なんで…こんな……っ」
気丈な土方の涙声は、それだけで嗜虐心が大いに刺激される。
「言ったろ。十四郎が可愛いからだって」
言ってることとやってることが全然違うじゃないか、と思う土方には、可愛いコほど苛めたい銀時のような屈折した心理は理解できないのだ。
「可愛くて愛されてるのに、ひとの好意を踏みにじって無茶ばっかりしてるからだよ」
意味が――わからない。
嫌われてるとは思ってないし、それなりに好かれてるのも知ってる。ましてや気持ちを踏みにじってるつもりなんて毛頭ない。心配や迷惑をかけたくないと思うことが、そんなにいけないことなのか?
「分かんねェ、ってカオだな?」
銀時がまとったドス黒いオーラが重量を増した気がした。
こんな酷薄な雰囲気の銀時なんて見たことがなくて、どう対応したらいいのか困惑する。
いつもヘラヘラ笑ってて、甘いお菓子に目がなくて、ジャンプが好きで、対戦ゲームにムキになる姿しか見たことがなかったから。こんな顔を見せられても、どうしたらいいのか分からない。
頭では、素直に言われた通りにしたほうがいいと忠告するのだが、理不尽な暴力に屈することが感情的にどうしても許せない。
解けるはずがないのに躯を捩ってもがくたび、ツヤツヤと唾液に濡れて真っ赤に尖った乳首が扇情的に揺れる。
それを見つめている銀時は、どんどんと頭の芯が痺れていくのを感じていた。
土方に「どうして」という目で見つめられるが、銀時自身、頭の片隅で(どうして)という声がずっとしている。銀時だって、こんなつもりではなかったのだ。
もっと優しく抱きしめて髪を梳いて顔じゅうに接吻けの雨を降らせて、何があっても守るから、ずっと傍にいるから、だから身も心も俺に預けて――
そんな風に優しく愛してやるつもりだったのに。きっと、そうしていれば土方も素直に躯を開いてくれたかもしれないのに。
けれど土方に、怯えた表情で拒むような仕種をされ、うっすら滲んだ涙を見た瞬間、優しい気持ちはどこかへ消えうせ、凶暴で獰猛な欲情がマグマのように噴き出してしまったのだ。
これはきっと、土方をズタズタに引き裂いて貪り尽くすまで鎮まることはない。
「ィ、あっ…く……」
手荒に脚を割り開かれ、奥まった自分でも直に触れたことなどない窄まりに指が捻じ込まれる。何かぬるぬるしたものが塗られているせいで抵抗なく入り込んではくるものの、強烈な異物感に吐き気がこみ上げてきた。
「それ、きもち、わる… 抜いて、くれ……」
本当に気持ち悪いのだろう。先ほど散々乳首を弄られて半ば勃ちあがっていた花芯が、少し萎れてしまった。
だがむろん、銀時に手を緩めるつもりはない。押し出そうと無意識に蠕動する内襞に逆らって、より奥へと侵入を試みる。
小刻みに指を蠢かしながら少しずつ奥へと進んでいくと、やがてこりっとしたしこりに触れた。
「ひぁぁっ!?」
ビクンッと、細い肢体が激しく跳ねる。
どうやら土方は前立腺が感じる体質のようだ。ありがたい。
未知の感覚に土方は驚きに瞳を見開き、銀時は嬉しさに目を細める。
「あっ、あ… やめっ……」
せっかく見つけた快感の源、やめろと言われてやめるはずもない。一度萎えかけた花芯も、ちょっと掠っただけで再び頭を擡げ始めていることだし、ここは念入りに責めるしかないだろう。
「うっく… ひ、ああっ……!」
銀時がソコを指先で押したり捏ねたりするたびに、土方は狂ったようにシーツの上をのたうちまわる。
(すっげー感じてんなァ… 初めてでこの感度って、先が愉しみだぜ)
その乱れぶりに、自分で仕掛けておきながら銀時はしみじみ感じ入った。
指一本で土方を喘ぎ狂わせているうちに、銀時の中の黒いモヤモヤが少しだけ晴れてきた。朱く染まった眦からぽろぽろと零れ落ちる綺麗な涙で洗い流されたのかもしれない。
だとしたらやはり、銀時の中の黒いものすべてを消し去るには、涙も喉も涸れるまで土方に啼いてもらうしかなさそうだが、そう難しいことでもなさそうだ。
どれほど快感が強くても、むしろ強すぎるからこそ、初めての感覚に絶頂に達することができずに、とめどなく愛液を溢れさせながら土方はひたすら悶えのたうちまわるだけだ。
どんなに快楽を与えようと、ペニスに触れられない限り達けないのであれば、銀時に貫かれ突き上げられた土方はどれほどの狂態を見せてくれるのか。
期待と興奮に胸を高鳴らせながら、己の凶器で土方の奥深くまで刺し貫くべく、銀時は淫蕾へと狙いを定めた――



蛇足にもほどがある… 結局挿入までいってないし…
≪5へ 挿れろよ!≫


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