ひめひめ 2 |
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「じゃあ部屋に案内するよ」 「2人先住者がいるが、どちらも桂君と同じ一年生で、君に頼もうと思ってる仕事の先輩にもあたるんだ」 「何か分からないことがあったら、もちろん我々でもいいが、同学年だし同室だし聞きやすいだろうから彼らに聞くのもいいと思うよ」 交互に説明を受けながら案内されたのは、寮の最上階一番奥まった部屋。 『特別室』という金縁のプレートが掲げられているのは、他の、いかにも寮室といった感じのシンプルで無個性なドアとは打って変わった、精緻な紋様が彫られた重厚な趣の扉。 名実ともに特別室といった雰囲気に、さしもの桂も少々気後れした。 「ここ、ですか?」 「そう。この部屋が今日から君の家だよ」 当然のように肯定され、この扱いに異論が出ないほど重大な仕事らしいと知り困惑する。 そういえばいつの間にか、桂たちの後ろを生徒たちがぞろぞろとついてきている。 今さらながら辞退したくなってきた桂をよそに、寮長が扉の横のインターフォンを押した(寮でインターフォンって――) キラキラキランッ、とでも表現するしかないような音が室内で木霊している。 「……はい」 「ああ、沖田君? 私だけど、ちょっといいかな」 「わかりました」 しばらくしてゆっくりと扉が開き、中から少年が一人顔を出した。とたんに背後のギャラリーがざわめく。 桂と同い年ということだったが、とてもそうは見えない華奢な少女のような少年だ。 「沖田君、お疲れ様。紹介するよ。こちら、転入生の桂小太郎君」 「よろしく」 会釈する桂に挨拶を返すでもなく、沖田と呼ばれた少年は新入りの全身をざっと眺めると、再び寮長に向き直った。 「…特別室入りで?」 「ああ、問題ないと思うんだが?」 「…分かりやした」 沖田が頷くと、寮長も会長もあからさまにホッとしたように肩の力を抜いた。一年生だと聞いていたに、沖田の一言にはそれだけの権限があるとでもいうのか。 「…同意してもらえて良かったよ。桂君、彼は沖田総悟君。とても頼りになると思うよ」 「ところで沖田君。土方君は?」 特別室に着いてから初めて、生徒会長が口をきいた。 「土方さんですかィ? さっきアメフト部に追っかけられてるのを見やしたがね。そろそろ戻ってくるんじゃねェですか」 「そうか……」 心なし、ガッカリしたような会長の声。土方というのが、もう一人のルームメイトの名だろうか。 「ああ、噂をすれば……」 沖田が見やった廊下の先の方から、賑やかなざわめきが聞こえてきた。と、桂が振り返った瞬間。 ざざっ、とヤジ馬の塊が真っ二つに割れ、真ん中に道ができた。 何ごとかと目を見開いた桂の視界に、廊下をすごい勢いでズンズンとこちらに向かって突進してくる男子生徒が一人。 「ウゼェっつってんだろっ!ついてくんなっ!」 後ろからゾロゾロとついてきてる生徒たちを振り返って一喝。窓ガラスがびりびり震えるような怒声にも、怯むどころか歓声があがる。 「おおっ」 「振り返ってくれたぞっ」 「もっとよくお顔を見せてください〜」 怒鳴りつけても喜ばれるだけだと無視することに決め(だったら最初から怒鳴ったりしなければいいのに、と桂は思った)彼は真っ直ぐに特別室を目指す。 そして桂たちから1メートルほど手前まで来てようやく、いつもと違う様子に気づいたようだ。 今にもそこをどけ!とでも言い出しそうな目つきだったが、寮長と会長の存在を認めたのか不審そうな表情で桂を睨むにとどまっている。 しかしその眼が。 (この眼、どこかで……) 瞳孔は開き気味だが強い光を放つこの瞳。こんな印象的な眼の持ち主を、そうそう忘れるはずがない。一体どこで――? 記憶の糸をたぐろうとまじまじと見つめてくる桂を、さらにキツク睨んでいた土方の瞳が、何かに気づいたのかふいに見開かれた。 その瞬間、桂も悟った。 「そなたは、さきほどの……!」 間違いない。髪型と服装は変わっているが、先刻校門の前で出会った少女だ。 「知らねェッ!俺はてめェなんか全ッ然知らねェからなッ!」 これでは大声で「身に覚えがあります」と宣言してるようなものだと、本人は分かっているのだろうか。 「おや、知り合いかい?」 「知らねェっつってんだろっ!」 面白そうに訊ねてくる生徒会長に土方が食って掛かっている。上級生にもこの口調なのか―― 「そう? じゃあ一応紹介しておくね。こちら桂小太郎君。今日から土方君たちのルームメイトだよ」 「え? じゃあ……!」 何故か土方が顔を輝かせる。 「うん、君たちの仕事を手伝ってもらうことになると思うよ」 生徒会長の発言に、土方の顔にパァァッと満面の笑みが広がった。 (うっ。か、可愛いではないかっ……!) 目が眩むほど可愛い、と感じてしまったのは桂だけではなかったようで、背後では声にならない呻きをあげ鼻血を垂らしながら、生徒たちがバタバタと床に倒れ伏していっている。 「じゃあ、俺はもうお役ご免ってことかっ!?」 「何を言ってるんだ。3人で頑張ってもらうに決まってるじゃないか」 食いつきそうな勢いで掴みかかる土方を、さも愛おしげな目で見つめながらも、会長はきっぱりと言い放った。 「なんでだよっ。総悟がいるんだから、ソイツと総悟でいいじゃねェかっ!」 「と、言われてもねえ。別に定員があるわけじゃないし、君ほどの適任はそうそういないからなあ」 「どこが適任だよ……」 途端に土方は哀しげに瞳を揺らす。 強面なのに、くるくるとよく変わる表情がたまらなく愛らしい。 第一印象の衝撃も加わって、桂は非常に土方が気に入った。心に壁を作り、滅多なことでは他人に気を許さない桂には大変珍しいことである。 「まったく。いい加減諦めなせェ、土方さん」 沖田にとどめを刺され、がっくりと項垂れた土方と共に、桂も特別室の中へと足を踏み入れたのであった。 「それで結局、俺がやる仕事とは何なのだ?」 部屋に入ってしばらくすると、土方は徐々に哀しみが怒りに変化してきたらしい。 「ふざけんなっ」「なんで俺がっ」「向いてねーっつってんだろっ」などと喚きながらクッションに八つ当たりをしていて、とても落ち着いて話ができるようには見えないので、仕方なく桂は沖田に尋ねた。 「寮長たちから聞いてないんですかィ?」 「ああ、明日説明すると言われただけだ」 詳しい内容はともかく、大まかな概要ぐらいは知っておきたい。土方がこれほどにイヤがっていればなおさらだ。 「じゃあ明日、きちんと聞いたほうがいいと思いますぜ」 「しかし……」 桂がチラリと土方を見やると、沖田は爽やかな外見には似合わない黒い笑みを浮かべた。 (こやつ… 見かけ通りの人間ではないな) 感情がすべて表情にあらわれてしまう土方とは正反対で、何を考えているのか全く読めない。 「土方さんですかィ? あの人は往生際が悪いだけでさァ」 さっさと開き直っちまえばいいものを、と北叟笑む沖田からはそれ以上何も聞き出せそうになかった。 |
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会長・寮長は特に銀魂キャラではない方向で |
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